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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第2章 ふたりでひとつ


『貴様が単純だからだ。』

かりかりと、戦利品の金平糖をかじりながら信長様は笑っていた。

「単純って!」

『俺が外れの手をちらっと見た時、貴様の鼻が動く。』

「んっ!」

私は咄嗟に鼻を隠した。

『まだ、やるのか? 戦利品の金平糖もいいが、貴様の膝もほしい。』

「次が最後で、…私は目を瞑ります!

どーっちだ?」


サァッ


ひんやりとした風が吹いた。髪が風に遊ばれて揺れるのがわかる。二回ともすぐに答えを言う信長様が、いつまでも静かで。
あれ?って思って、薄目を開けた。

ーーっ!

目の前には口付け寸前の距離の信長様。

チュッ

わざと、音を立てるような口付けをすれば、自然に吐息が混じり合う。
私の左手の中の金平糖を、信長様は意図も容易く取り出して口に加えた。
私が信長様の首に腕を回せば、それが合図のように、時間も場所も関係なく、甘やかされる。
寒さなど忘れるほどに、熱く甘く、優しく溶け合う。





「もぉ、秀吉さんに叱られますよ?」

『黙っていれば良い。』

乱れた私の髪を結い直す信長様は、チュッと私の首筋に痕を残した。

『この痕を見たら、叱られるな。』

「もぉ!」

チュッ

私も、仕返しに信長様の首筋に口付けて痕を残す。

『…貴様。』

「くすぐったかったですか?お揃いになりましたね。」

信長様の首筋に付いたすぐに消えそうな小さな痕を、つっとなぞると、信長様は怒ったように私を見た。

『一度でなく、二度までも。…仕置きが必要だな。』

「えぇっ!」

私が急いで離れようとするけれど、力では負けてしまうのは当たり前で。
すとん、と信長様の胸に体がもたれた。

とくとくとく

血の廻る音がする。
見上げれば、紅の瞳に射ぬかれた。

『愛している、以上の言葉が欲しいな。』

「…え?」

『愛している、だけでは足りん。俺の全てが貴様のもので、貴様の全ては俺のもの。この体も、この吐息も、熱も、欲望も。』

「ふたりで…ひとつ。」

『ふたりで、ひとつ?』

『補い支えあい、分け与え満たし合う。
信長様の未来は、私の未来。

私と信長様は、一心同体、ですね。』

『一心同体、か。いい響きだ。貴様と俺は一心同体。
永遠に。』

ゆっくりと唇が触れ合う。
私の魂も体も信長様に吸い込まれるようだった。







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