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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第2章 ふたりでひとつ


「もう夕暮れですね。」

夕闇に染まり始めると、風も冷たくなる。
ふんわりと香る信長様の匂いで、羽織をかけてくれたのがわかった。

『夕げの後の甘味に、土産を買うのであろう?』

「あ、そうだった!」

『無くても良いがな。』

「そんなことないですよ!皆待ってるから!」

『では行くか。小物屋も寄ろう。』

「え?」

『久しぶりの逢瀬の記念に、ぷれぜんとを選んでやろう。』

「この前の視察のお土産でたくさん頂きましたよ?」

『ぷれぜんとだ。』

信長様は、ずるい。
優しく頬を撫でて、覗き込むように私を見れば、嫌だなんて言えないのに。
私の頭の中は、信長様でいつも一杯。
愛しい唯一無二の人。





それから甘味屋でお土産を買って、小物屋で簪を選んでもらった。
『全てもらう。』なんて信長様が言うから、慌てて止めて、そうしたら困った顔をして。
その顔が可愛くて笑ってしまった。
見かねた店主さんが、小さな花の形の鈴の付いた簪を差し出してくれてた。
信長様が結い上げた髪にさすと、チリチリと音がなる。

『これで、貴様を見失うことはないな。』

そう言うと、明らかに多いだろう代金を置いて歩き出した。

『こ、こんなには頂けません!』

『我が奥に合う簪を選んだ褒美よ。』

『あ、有り難き…』

何度も頭を下げる店主さんに私も手を降って、信長様が跨がった愛馬に乗る。
揺られればその度にチリチリと鳴る鈴の音色に、にやけてしまって、ふいに信長様を見上げると、信長様も微笑んでいた。

『あやつらは、いつか必ずやってくる。』

「…!」

『焦るな。巡り合わせを待つのも一興。貴様と二人の時間を楽しいことも悪くはない。』

不意をつかれた言葉に、景色が滲む。
信長様の胸に顔を埋めると、優しい手が頭にのる。

『…今宵は寝かせぬ。』

ん?

「さ、先ほど…」

『忘れた。』

「えぇっ!」

もうすぐ城門が見える。もう、夕闇に月が出ていた。

『はぁ。』

「…どうかしましたか?」

『見ろ。』

「あ。」

城門に見えるのは、仁王立ちの秀吉さん。

『あやつの小言は聞き飽きたな。裏口に回るか。』

「え?」

『、捕まれ。少し駆けるぞ。』





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