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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第2章 ふたりでひとつ


『おっ、御館様!』

足早に私の手を引く信長様。
背中から聞こえる秀吉さんの声。
私は、ようやく訪れた、ほんの少しの平穏を噛み締めていた。





三成くんに見送られて、信長様の愛馬に乗り城下の終わりまでやって来た。

『甘味はいるか?』

「遅い朝げでしたからね。帰り道にお土産買うだけにしましょうか?」

『…では、これを食べるか。』

信長様は、懐から金平糖の瓶を見せた。

「あぁっ!どこから?」

『光秀の忍びが寄越した。』

「ふふっ。さすがぁ…。」

『では、行くか!』

「はい!」


信長様は、私の腰に手を回しながら横抱きで支えて、丁度いい速度で愛馬を走らせていく。
触れ合う肌から感じる暖かさが、肌寒い季節の風を忘れさせてくれるようだった。

次第に、いつもの丘が見えてきた。
楽しいことも、泣きたくなるような辛いことも、この丘で過ごした大切な場所。

先に降りた信長様に、抱き付くように私が馬から降りれば、すぐに口付けの嵐が始まる。
息が出来ないくらいの口付けに、溶かされる。

『…っ、ふっ。戯れし過ぎずなど、無理なことよ。』

「はっ、はっ。信長、様。」

合図や言葉など、もういらない。
お互いが隙間を求めて埋める、それだけだった。

『…忙しかった日々、よく耐えてくれた。』

「私は…、信長様の目指す未来を共に見たいのです。
お忙しいのは仕方のない事です。」

『物分かりが良すぎるぞ?』

「…じゃあ、今日はここで沢山我が儘言います!」

『あぁ、望むところだ。…して、何をする?』

「…腰かけて金平糖食べましょうか?」

『腰掛けず、膝枕だ。』

「えぇっ!」

信長様と私は手を繋いで歩く。
同じ歩幅で、並びながら。

「金平糖の瓶を貸してください。」

『何故だ?』

「勝負をしましょう。」

『は?』

「私の手にある金平糖。どちらの手に隠れているか当てられたら、膝枕してさしあげます。」

『ほう。』

「じゃあ、いきますよぉ。」

現代にいた時に友達と遊んだ、手の中に隠したものがどちらの手にあるかを当てる遊び。
まさか、戦後時代で愛する人とやるとは思わなかったな。

「どーっちだ?」

『…右。』

「…当たり。もう一回!

どーっちだ?」

『右。』

「んぁあっ!」

『当たりだな。』

「…なんでぇ?武将だから?」







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