第12章 限られた時間
『…俺が話した。』
『『…えっ?』』
「ほらっ、信長様が私の部屋の隣の部屋で寝てたじゃない?
その時に、私の部屋に遊びに来てくれてて。信長様のいる部屋で、ちょっとだけお茶したの。」
『はぁ?』
『気づきませんでした。不覚でしたね…』
『あの頃は皆慌ただしかったから…』
「光秀さんが一緒にいてくれたよ? ねっ!」
『あぁ。俺は今もあの時も佐助の気配は気付いていたからな。』
『…と言うことだ。』
ドン。
三人が力が抜けたように座り直した。
『…で、何用か。』
『我が主からの快気祝いと書状です。』
差し出した書簡を秀吉さんが受け取って、信長様へ渡す。
『ずいぶんお腹が出てきたね。体調は?』
「だいぶ楽。でも食べすぎたら苦しくなるけどね。五ヶ月過ぎた辺りだから、もう動いたらわかるんだよ。」
『へぇ。お腹触ってもいい?』
「うん。触って。」
佐助くんが私のお腹を優しく撫でた。
ぽこっ
『わぁっ!』
「ねっ。動いたでしょ。お友達の佐助くんだよ。怖くないよ。」
『産まれたら一緒に遊ぼうね。まきびし、あげるよ。』
『『『『だーめーだ!』』』』
『くくっ。』
『簡単に入ってこられたら困るんだよっ。』
『黙って見てたらさぁ。勝手に、何触ってるの?』
『まきびしは、菓子じゃねぇ。』
『御世継ぎが御産まれになれば、警備はより厳重に…』
『…静まれ。佐助はの唯一の同郷だ。俺が許す。』
『ありがとうございます。』
『して、光秀。貴様の忍びは何人出せる?』
『はぁ。…越後は何人と?』
『佐助を除き、軒猿10人だそうだ。』
『では、こちらは久兵衛を除き、10と致しましょうか。』
『のっ、信長様。なんの話ですか?』
『あぁ。懐妊祝いの為にあの丘に来るそうだ。の護衛に軒猿10人を用意するそうだ。』
「えっ、謙信様や信玄様、幸が来るんですか?」
『うん。どうしても、出産前の動けるうちに会いたいって。』
「わぁ。」
『御舘様、また…来るんですか?』
『旅じゃないんだから。』
『二人きり、とはいかぬがどうだ? また青空の宴とやらをするか?』
「はいっ!」