第12章 限られた時間
『南蛮の珍しい種類の金平糖だそうです。』
『なるほど。光秀、大義である。』
光秀さんの視察の報告が終わると、快気祝いと称した贈り物が渡された。
『な、おい!それっ!』
『奥方様と召し上がりください。』
『あぁ。』
『いやいや、お預かりします!』
『何故だ?』
『なぜって…』
「ふふっ。」
『なんだ、?』
「いえ、もとに戻ったなぁって。」
『ふっ、まぁな。次は貴様が励む番よ。』
信長様が微笑むと、秀吉さんも光秀さんも笑って頷いた。
『失礼します。信長様。は…』
『、甘味作ったぞ。』
『秀吉様はいらっしゃいますか?』
天守の襖から政宗と家康、三成くんの声がした。
『光秀さん、帰ってきてたんですね。』
『あぁ、今報告が終わったばかりだ。』
『じゃあ、皆で茶でも飲むか。』
『では、私がお茶を…』
『あっ、いや、三成。俺が煎れる。お前はこの文机の上を片付けてくれないか?』
『はい、わかりました。』
「あっ、あっ!三成くん、墨がこぼれちゃう!」
『あぁ、もう何やってんの。ほら、貸して!』
『家康様、ありがとうございます。』
『面倒事、増やされたくないから。』
「なんだかんだ、三成くんに優しいよね。家康って。」
『やめてよ。』
『照れるなって。』
『政宗さん、照れてません!』
天守は賑やかな小さな宴のようになった。
「あ、動いた!」
『『触らせろ!』』
『どこ、どこ?』
秀吉さんと、政宗、家康が一斉にお腹に手を当てた。
ぽこっ
『『うわぁ。』』
『すごい、胎動ってこんな感じなんだ。』
『貴様ら、俺の奥とわかっておるのか?』
『あ、いや、はいっ!』
『と信長様の子は俺達の子みたいなもんですから。』
『そうだっ、そうですっ!いいこと言うなぁ、まさむねっ。』
『俺は診察です。…って、秀吉さん泣かないでもらえます?鼻水出てます。』
『あぁっ。』ずずっ。
出産まで、あと五月あまり。
私の周りは、また賑やかになった。
でも。
少しだけ我が儘を言うならば… 子が産まれるまでのあとわずかな二人だけの時間を満喫したいと思った。
他愛ないことを話して、笑い合いたい。
寝る前に話してみよう、と私は決めたのだった。