第11章 たとえば 私が
『『…なっ!』』
『おっ、おい!ひでよしぃ!』
政宗が大声で秀吉さんを呼びながら、信長様が運ばれた部屋に向かっていく。
『政宗のやつ…。まぁ、仕方ないか。家康を除けば、俺達の中で一番奴が苦しんだからな。
早く知らせてやりたい気持ちもわかる。』
『えぇ、そうですね。』
「…良かった。」
『ええっ、ほんとうにっ…。ふっ。』
「あ、咲ったら…」
『あんたもあんたの侍女も泣き虫過ぎない?』
『腹の子に似なきゃいいな。』
「赤ちゃんは、泣くもんだよ?」
『そういう事じゃないって。』
ふふっ。私も咲も、家康も光秀さんも優しく微笑んだその時だった。
『なんだとぉ!』
バターン
『騒がしい奴だ。』
『っ、ほんとか?うっ、動いたって…』
「うん。そうだよ。ちょっとだけどね。」
『そうかぁ…。居るんだな、ここに。俺達の…』
「あ、いや、…。」
『俺達じゃなく、信長様との子ですから。』
『あ、あぁ。そうだな。』
子供みたいな満面の笑みが、かなり気を揉んでいたんだろうとわかるほどだった。
「ありがと。」
『さ、行きますよっ!ようやく寝たのに、秀吉さんのせいであの人起きちゃったんじゃないですか?』
『かもな。』
『そ、それはまずいぞっ!ま、政宗!』
『「…廊下は走らない。」』
私達はゆっくりと歩きだした。
※
幸せだよ。
私は幸せ。ねぇ。届いてる?
たとえば私が
500年後に産まれなかったら
私は愛する人にも信じ合える仲間にも会えなかった。
たとえば私が
幸せに育たなかったら
この世界の目の前の人たちに
私の知ってる幸せを伝えることは出来なかった。
だからね。
500年の時を越えた空の下だけど
伝わるといいな。
幸せだよ
大好きな人の赤ちゃんを産むよ
ねぇ。
お母さん。