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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第11章 たとえば 私が


『補い支え合い、分け与え満たし合う。
信長様の未来は私の未来。ふたりでひとつ、一心同体ですね!』

ふっと、あの懐かしいひとときの思い出がよぎった。

私は、何故ここに来たのか。
何故、私だったのか。

何故、残ったのか。

それは、私が全てを捨ててもいいと望んだからで。

大好きだからとか
そんな簡単なことじゃなくて

子を産むためとか
ただ、それだけじゃなくて

たとえば、私がこの先何があっても
どうなっても
側にいたいと願ったから。

死が私達を別つまで

たとえば、この後、貴方が私を殺しても
私は貴方を受け入れる

全てを包み込むって、そんな覚悟があったから。



「目も瞑らないし、耳も塞がない。」

『はぁ?、お前、何言って…』

「私は、半端な覚悟でこの世界に残ったんじゃない。」

『おい、今はそんな話…』

政宗が私を覗き込んだ。

「私は私が望んだからここにいる。
たとえこの先何があっても…!私はあの人と全てを分かち合うためにここにいる。だからっ!」

『駄目だって!』

『お行きください。』

「えっ、!?」

ぐっと、腕を引いたのは咲だった。

『おい、咲。お前。』

『何かあれば、私が楯になりましょう。ふたりでひとつ、様は信長様の奥方でございます。

唯一無二の絆よりも強いものはございません。』

閉まっていた襖が開いて、冷たい風が吹き込んだ。
一瞬目を瞑って、すぐに愛する人の背中が見えた。

家康と三成くんと睨み合っているようで、その背中はゆらゆらと揺れていた。

『な、なんで、出てきたの!早く入れって!』

『家康、貴様ぁ!』

信長様の拳が家康に向かう。

『御舘様、いけません!』

秀吉さんが、振り上げた拳を押さえる。

『おい、政宗。何かあれば直ぐにうごけるようにしろ。も、咲も死なせるなよ。』

『はっ、光秀。おせぇじゃねぇか。わかってること言うな。』



私は覚悟を決めて、背中に抱きついた。

「もう、やめて。…やめて、大丈夫。大丈夫だから。」 

『、…か?』

『側におります。貴方と私は一心同体。ふたりでひとつだから。』

背に抱きついた私は、久しぶりに振り返る信長様と目を合わせた。














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