第11章 たとえば 私が
『さぁ、様。こちらへ。』
『、入れ。』
私の肩を政宗が抱き、背中を咲が押す。
『っ、側にいろ…。』
『あんたも部屋に入って、薬湯を…』
『飲まん!』
「ふふっ。」
『様?』
「第六天魔王が、子供みたい。…ねぇ、咲。」
『…はい。』
私が咲の方を向くと、咲は場違いなほど優しく微笑んでいた。
「…側にいたいよ。」
『、駄目だ。家康が許さない限り、俺達は信長様とお前を一緒にはさせられないんだ。』
「政宗。でも私は…、どんな姿も受け入れたい。」
『それはっ…、それは俺達だって一緒なんだ。でもっ。』
『でも、腹の子のためだから。』
秀吉さんが苦痛な表情で話せば、家康が核心を付くように繋げる。
政宗が家康と目を合わせると私を部屋の奥に押し込んだ。
『さぁ、捕まってください。』
秀吉さんが、信長様を立たせて部屋に運ぼうとする。
『黙れっ!触るな!』
『御舘様!』
掠れたような声と、何かを振り払うような音がする。
『御舘様!家康、どうしたらいいんだよっ!』
『俺だってわかりませんよ!』
『どけっ、秀吉!』
『いけませんって、御舘様! あぁっ、三成、光秀、いないのか!』
ドタドタと廊下を飛び跳ねるような音がする。
苦しんでる、そう思うと胸が張り裂けそうだった。
『、奥に入れ。』
入り口を隠すように政宗が私の前に立って、気付けば三成くんが部屋の襖を、パタンと閉めた。
「ま、まって…。」
『っ!行くなぁ!』
『駄目だ、また混乱されてるようだ!おい、解毒出来てないんじゃないか? どうなんだ、家康!』
『概ね解毒出来ても、熱もまだある。だから、薬湯を飲ませなきゃならないんです!』
『三成、押さえるの手伝え!』
『政宗さん!今、出したらまずいですからねっ!』
『わかってる!』
『離せぇ!』
『御舘様、どうか御静まり下さい!』
『三成、転ぶなよっ!』
ドカン
『うわぁっ!』
『『秀吉さん(様)!』』
「政宗…」
『駄目だ。耳を塞いで目を瞑れ。』
襖一枚、壁一枚なのに、その距離が永遠に感じた。
500年の時以上に。