第9章 夢の続き
『あぁ、咲、褥の準備だ!急いでっ!』
『はっ、はい!』
咲が、バタバタと私の部屋に向かう。
私はその背中を見送って、すぐに信長様の右手を握ろうとした。
『やめろっ。』
『御館様?』
『秀吉、ここはどこだ?』
『城でございます。安土城で…』
『安土? 何を言っておる? 安土は、まだ紫陽花など咲かぬ。』
『「…紫陽花?」』
信長様の視線の先は、初夏に咲く紫陽花の場所。
まだ、春をも迎えていないこの時期に、紫陽花など咲くわけがない。
『は?』
『…は? あんたの隣にいるでしょ。』
家康が私の手を、信長様の右手に乗せた。
ゆっくりと私に向き返る信長様と視線があって、声をかけた。
「のぶ、なが…さま。」
『貴様、誰だ?』
鋭い眼光が私を射ぬいた。
『御館様、何を…。、奥方様ですよ?』
『違うっ!』
『うわぁっ。』
ドン!
強い力ではね除けられた私は、勢いよく尻餅をついた。
『こやつは、忍だ。ではない。俺を射た奴等の忍だろう!
何故、城に上げたぁ!即刻、斬るっ!』
ガチャ!
目の前で抜刀した信長様は、私に向けて鋭い切っ先を向けた。
『なっ、御館様!?』
『信長様!…まずい、秀吉さん!あの矢に毒か何か塗ってたんじゃないですか? これ、…かなりの幻覚ですっ!』
『秀吉っ!何故止める!?』
『御館様、です!』
『多分言ってもわかんない! 信長様には忍に見えてる!』
私の目の前で、抜刀して私に刀を向ける信長と、刀を持つ手を必死に押さえる秀吉さん。
腰回りを押さえる家康。
『弥七ぃ、吉之助ぇ!』
『『はっ!』』
『を離せ!今すぐだ!』
『様、さぁ! …立てますか?』
ふるふる、と首を横に降る。
で刀の切っ先とそれを向ける鋭い信長様の目から、目が離せなくて、体が氷のように冷たくて動けない。
『、立って!抱いてでいいから、早く、連れていけっ!』
ガシャン!
秀吉さんの押さえていた、信長様が持つ刀が手から落ちた。
『離せっ、秀吉ぃ!貴様、何の真似だ!
こやつは城には上げられぬ!』
一瞬の隙に、体を押さえていた秀吉さんと家康を振りほどいた信長様は、私に馬乗りになった。