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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第7章 かぐや姫の故郷


「うん。」

私は広間に敷かれた褥に体を預けた。
湯たんぽ、みたいに温められた石を入れてくれているお陰で、褥はほんわか温かい。

「あ、咲。」

『はい?』

「家康に、信長様に遣いを出すなら、私も文を預けたいって話してくれる?」

『承知しました。信長様が喜ばれることでしょう。』

「…あとね。」

『えぇ、?』

「手、繋いで?」

『…ふふっ。はい、わかりました。ここにおります故、ご安心を。』

咲の優しい笑顔を見ると、また涙が溢れた。
瞬きしたら、ポロポロ流れて枕を濡らしてしまった。
でも、咲の手の温かさが、ゆっくり眠気を連れてきて、私はいつのまにか眠ってしまった。

『安土の…。天下人とも魔王とも言われるような信長様の奥方様が、このようにお優しい方なのは…
神や仏の思し召しなのかもしれませぬな。』


咲が、こんなことを呟きながら髪を撫でてくれたのを、私は知らない。
けれど、夢心地に温かい温もりを感じた気がした。





その夜の夕げを、政宗、家康、三成くんと摂り終わってお茶を飲んでいたら、咲が文に使う和紙と筆を用意してくれた。

『咲から、信長様に文を書きたいって聞いたけど?』

「あ、うん。そう。」

『明日、光秀さんの忍に報告書を託す。それに一緒に持っていってもらう事にしたから。
…あんた、文書けるの?』

「あぁ…。あんまり書けないや。名前くらいしか自信ない。」

『え、じゃあどうするのさ?』

「…うーん。」

『俺が書いてやろうか?』

『い、いえ。私が!』

「政宗も三成くんはも、ダメよ!恥ずかしいじゃない!」

『じゃあ、どうするのさ?俺が書こうか?』

「家康もダメ!…あっ!」

『『え?』』

「咲!お願い!」

『わ、私がですか?』

「後で、私が話したことを書いてくれない?」

『よっ、宜しいのでしょうか?』

「適任だよ!咲なら大丈夫。お願い。」

咲がキョロキョロと、広間を見渡している。

『の指名なんだから、いいんじゃない?』

「ほら、家康もいいって!」

『か、かしこまりました。』

『あとで、何て書いたか教えろよ?なっ。』

「まぁさむねぇ!文を書く間は人払いだからね!」

私がそう言うと、3人が久しぶりに笑い始めた。
その笑顔を見ていたらなんだか無性に信長様に会いたくなった。










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