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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第7章 かぐや姫の故郷


『500年、後…?』

「咲、…ビックリしちゃうよね。ごめん。」

『様は、日ノ本でお生まれではないのですか?』

「日ノ本だよ?…でも。この国だけど、この国じゃない。かな。」

『…?』

咲は首をかしげた。
嘘みたいな夢みたいな話を、私は喋っている。
それを、普通に聞いている家康は、私がどこから来たのか知っているからで。
まだ、何も知らない咲は、私が意味不明な事を話すたびに不安になってしまうだろう。

「いつか、咲にちゃんと話したいんだ。」

『…あの人が許可してからじゃない?』

「うん。そうだけどね。
ねぇ、咲。安土の出産の事を教えてほしいんだけど、だめ?」

『は、はい。勿論で、ございます…』

それを聞いた家康が、クスッと笑いながら診察道具を片付けて立ち上がった。

『ゆっくり教えてもらえば? 俺は政宗さんの所にでも行ってくる。』

優しく笑うと、咲に指示をして広間を出ていった。

それから、咲にこの世の出産の事を教わる。
それは命懸けで、私の常識などかけ離れていた。
信長様との子供なら、乳母は当たり前だとか。
立ち合いなんてもっての他で、お産をする部屋にこもる、とか。
落ち着いたら、信長様に相談して少しは私の希望に沿った出産をお願いしようと思った。


「産着とかはどうしてるの?」

『人選した針子が仕立てます。…まさか様?』

「あ、うん。せっかくだから体調が落ち着いたら寸法とかを教えてもらって仕立てようかなって。」

『落ち着いたら、ですよ? 今なんて無理です。半刻すら座っていられないお体で、そんな事!』

「わかってるよ。もう、咲はお母さんみたい。」

『…光栄でございます。さぁさ、お休みください。』

「ねぇ、咲。」

『なんでしょう?』

「ずっと一緒だよ? 私の事、ずっと助けてよね?」

夜襲があって越後に行くかもしれない、というあの時。咲は旅支度を最後までしなかった。
それは、私だけ安土を離れるという事。
私だけ、生き延びる、という事。

「ずっと一緒にいるって、約束して?」

『…様。まったく貴女様は困ったお人ですね。お約束致します。生涯、お側におります。お支え致しますよ。』

「うん。ありがと。約束ね。」

『さぁさ、お休みください。家康様に叱られますよ。』








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