第6章 嵐の前の
「え? どうしたの?」
『ははっ。どうしたの、じゃねぇ。家康を叱ってるからだろ?』
「え、政宗!叱ってないよ!」
『叱られました。』
「家康!やめて!」
『さん、いいなぁ?家康公を叱れるなんて。』
「佐助くん、よくわかんない。」
『羨ましいです。』
「三成くんも、よくわかんない。」
『さすが、奥方様。』
「咲!やめて!…っもう、食事が冷めちゃうでしょ。ほら、皆食べなきゃ!」
『『ははっ!』』
「…。もぉー!なんなのよ!やめてってば!」
ふふっ。
ははっ!
ほほほっ。
家康も、三成くんも、政宗、佐助くん、みんなが笑い始めて、そうしたら、私を見ていた皆も笑い始めて。
広間は、暖かい空気になった。
「美味しい。政宗のお粥、食べやすい。」
『だろ?出汁で煮たんだ。これなら食べれそうか?』
「…あ、うん。ありがとう。」
政宗は、すごく優しく笑って頷いてくれた。
家康か三成くんに、妊娠したこと聞いたんだろうな。
食事が終わった家臣や兵達が頭を下げて出て行き始める。
「まだ、休んでいけばいいのに…」
『はぁ。あんたがいるのに、休めるわけないでしょ。ちゃんと部屋を用意してある。』
「あ、そうなんだ。」
『少し寝て。ずっと起きてて、食事の時も座ってたし。しんどいんじゃない?顔色良くない。』
家康はするどい。
実は胸元も背中も汗で濡れていた。
政宗の作ってくれたお粥も、半分しか食べられなかった。
『あとで、また温めてやるから。無理するな。』
『まだ落ち着きませんので、こちらにはなりますがお休みください。』
政宗と三成くんがそう言うと、私のお膳を片付け始める。いつの間にか咲が着替えを用意してくれた。
人払いをしてくれて、着替えを済ませると、家康、三成くん、政宗、佐助くんが来てくれた。
『さん、そろそろ一旦越後に戻るよ。朝げ御馳走様。俺達皆にまで、ありがとう。』
「そんな、こちらこそ。ありがとうだよ。」
『謙信さまには、ざっくりと報告しますが、懐妊については改めて。
何かあれば、また呼んでください。』
『悪いね。感謝する。』
『家康公…』
「良かったね、佐助くん。」
『あぁ、最高の褒美だ。じゃ、また!』
「気を付けてね!」