第6章 嵐の前の
『…家康公。落ち着いたようなので、俺達は…』
佐助くんが、一歩引いて頭を下げた。
『政宗さんの朝げ、お前達も食べていきなよ。』
『えっ、いいんですか?それこそ、畏れ多いんじゃ…』
『奥方様、どうします?』
「えっ、あっ、皆さんも是非。…って家康!」
急に家康が、奥方様何て言うから恥ずかしくて両手で顔を隠したら、三人が笑いだした。
私も釣られれば、まわりの人達も微笑んでいて…
少しだけ涙が出た。
広間に集まった家臣や兵達の看護に混ざろうとしたら、片手を咲に、もう片手を家康に引かれ、信長様の座る上座に敷かれた褥の上に座らせられた。
咲の顔が怖くて、小さな声で「ここにいるから。」って言えば、家康と佐助くんに笑われた。
バタバタとお膳が運ばれる。
懐かしい食事の匂いに胸が詰まった。
『よぉ、。大丈夫か?』
「政宗ぇ!」
『広間を開け放つなんて、さすがあの方の奥方だな。
朝げ出来たぞ。』
「ありがとう、政宗。でも、私より皆から…」
『ふっ。そういうと思って、運ばせてる。は粥にしたぞ。』
動ける人が食事を配って、行き渡らせた。よく見たら佐助くんの仲間も座っていて、ちょっと笑ってしまった。
『夜襲によく耐えてくれた。奥方の計らいで広間を開け放って食事を摂るんだ。ゆっくり食べなよね。』
『味は保証する!しっかり食べろ!』
『皆さん、お疲れ様でした。』
『『ははっ!』』
家康、政宗、三成くんの順に声がかかり、食事が始まる。上座の私のすぐ側に、家康と三成くん、政宗が座り、後ろには咲が座った。
家臣や兵、皆が私に頭を下げるから、居たたまれなくなってきた。
「…私、ここ降りたい。」
『は?ダメでしょ。』
『奥方様ですから。』
「二人とも、いつもはそんなこと言わないじゃん。」
『今日はダメ。』
「なんでよ、けち。」
『様、家康様にけちなどと!』
「だって、けちじゃん。みんなと一緒に食べたい。」
『はぁ、あんたさ。奥方なんだからさ。さっきの威厳の有る物言いはどうしたのさ?』
「威厳?…当たり前の事でしょ?
守ってくれたんだから、感謝するのが当たり前。
感謝する側なのに、私がここにいるなんて変だよ。」
突然、広間が静かになって家康だけじゃなく、みんなの視線が私に集まった。