第5章 朝焼けよ、三日月を照らせ
『夜襲なんて卑怯な真似を!貴様ら、覚悟してんだろうなぁ!』
政宗の兜の三日月と、抜刀した日本の刀が、朝日に反射する。政宗の覇気に踊るように、それは輝いて見えた。
『てめぇら!奥州の力、見せてやれ!』
『はっ!』
次々に、政宗の部下達が敵をねじ伏せ、斬り倒していく。
『家康、三成!生きてるか!』
『遅すぎますから!』
『お待ちしておりました。』
『知らせを受けて、早駆けできたんだけどな。
遅くなって、わりぃ。
俺の隊で潰す!家康は、の元に行け。三成は後方支援を頼む!』
『はいっ!』
政宗の精鋭による攻撃は、敵の予想を上回る早さで敵陣を崩した。
そして、呆気なく決着がつき、謀反を図った大名と家臣達は捕縛された。
※
『!!』
家康の声が聞こえる。
私は既に、手早い咲によって旅支度をされていた。
周りには佐助くんと、数人の仲間の忍の人達。
弥七さん、吉之助さん。
私は、泣き腫らした目を優しく拭う咲の腕を、逃がさないように必死に掴んでいた。
『了解。変わらず援護しよう。』
「佐助くん…?」
『朝焼けに三日月が照らされたって。一先ず、安心だ。』
「三日月…。ま、政宗?」
『!』
「家康、? 血だらけじゃない!」
『あ、あぁ。…それより、政宗さんが来たんだ。
もう、大丈夫。あの人に暴れてもらう。』
「じゃあ、越後には?」
『行かなくていい。』
「…良かっ、た。」
張りつめた糸が切れるように、体の力が抜けて、咲に支えられる。
咲に抱きつきながら私は、大声で泣き出してしまった。
吉之助さんと弥七さんが、ふぅと一息ついたのが聞こえた。
『家康公、我らも加勢します。俺とあと二人は、さんに。他は、皆、政宗さんのもとに向かわせました。』
『助かる。』
『、疲れたよね。もう、大丈夫だから。
休んで。痛みは?』
「…、少し。ごめん。」
『いや、心配かけさせたから。大丈夫。三成も平気。』
「良かった。」
『みんな、あんたの名前を呼びながら、劣勢なのに戦ってくれたよ。』
『うん。』
朝陽が眩しいほど、広間に降り注いだ。