第5章 朝焼けよ、三日月を照らせ
『みつなりぃ!』
『家康様!』
『癪だけど。仕方ないから背中は任せたよ。』
『光栄です。様は?』
『佐助の判断に任せた。』
『そうですか。』
『出来れば生きて、お産の世話をしたい。』
『えぇ、産まれた御子を抱きたいです。』
『足掻くぞ!』
『はい!』
戦況は不利であったがなんとか、三成と家康の必死の守りが、敵の城門付近からの突破を防いでいた。
しかし、信長、秀吉、光秀がいない今、兵の数も手元の武具も限りがある。徐々に押されつつあった。
ただ、迎え撃ち諦めない安土の城守達の心は、ただ一点。のために、であった。
『はぁっ、はぁっ。政、宗さん!まだかよ!』
『はぁっ、このままでは、まずいですね。』
『今だっ! 総攻撃!』
大名の合図に敵兵が増えた。
負傷する兵の声が聞こえる。
『げっ、まだいたの?…やめろよな。』
『はぁ。隠していたのですか。』
家康と三成は、刀を持ち変える。
羽織は所々破け、血と土埃が混じりあい汚れていた。
二人の左手が朝焼けに照らされる。
その時、から貰った腕輪が見えた。
『石田三成、徳川家康…、ここまでよ。奥方共々、ここで終わりだぁ!』
『…馬鹿にするなよ。卑怯なやり方しか出来ないくせに。』
『えぇ、全くです。』
『三成、策はないのかよ。』
『…政宗様。』
満身創痍の二人が敵兵に対峙する。
瞳の中の炎は変わらずとも、疲れが目立ち始める。
『おい。なんだ、あれ?』
『…月?』
『はっ、まさか。陽が上がってるだろ。』
『じゃあ、…あの駆けてくるのは。?!』
城門で大名を囲む兵達の後方がざわつき始めた。
『申し上げます!』
『…次はなに?』
『城下後方より、…』
『てめぇら、好き勝手しやがって、わかってんだろうなぁ!』
ドガァ!
『な、この忍びは?』
『え、越後の軒猿? なぜここに!』
『ひっ、どっ、独眼竜!』
『…はぁ、はぁ。家康様。』
『あぁ。聞こえた。』
『『政宗さん(様)!』』