第5章 朝焼けよ、三日月を照らせ
佐助の登場に、広間に張っていた緊張感が緩んだのは、空が朝焼けに差し掛かる頃だった。
『申し上げますっ!』
家臣のただならぬ叫び声に、緊張感がまた戻る。
『なに?』
『城門より謀反を企てた一陣が戦闘体制に!』
『来ましたか。銃兵、弓隊は戦闘体制に。
家康様ら私は前線に。』
『あぁ、死ぬなよ。』
『えぇ。ですが…』
三成くんが、私に視線を移す。
いつもの優しい笑顔で。
『命を懸けて守らなければ。』
「みつ、なりくん。」
『大丈夫ですよ。家康様、佐助様、頼みます。』
そう言うと、早速と三成くんは出て行った。
『弥七、吉之助。お前達はの元を離れるな。佐助が越後に連れていくなら、お前達が殿だ。いいな。』
『御意。』
「咲、咲は?」
『大丈夫ですよ。』
「なにが?」
『。あんたが最優先だ。いいね。』
「どういうこと?…ねぇ、家康。」
『佐助、頼んだぞ。』
『はい。』
「家康!ねぇ!」
家康の厳しい顔が見えた。
もしかしたら、本当にヤバイんだ。
そう思った。
『ったく。政宗さん、どこにいるんだよ?』
家康の呟きが、静かな広間に響いた。
※
バァン!
次第に銃声が響き始める。
『城内にいれるな!』
『弾や弓は大切に、慎重に狙え!』
ドォン!
『城門が突破されました!』
『ちっ。三成は?』
『迎え撃っています!』
『本丸にいれるな!すぐに行く!
佐助!』
『はい。』
『判断は任せる。行くときは咲に伝えよ。頼むぞ。必ず越後に連れていけ。いいな!
弥七、吉之助。いいか、命を懸けて守れ。
これは、信長様からの主命とせよ!』
『『御意!』』
「さくっ、咲っ。…やだよ。一緒にいて。」
『様。いいですか。何があっても生き延び、御子を産むのです。』
「やだ、やだって。家康!」
『。俺は三成の元に行く。
守るから。命を懸けて。だから、信じて。越後に行くんだ。』
「やめて、命なんて懸けなくていい!家康!」
家康は、私の頭を撫でた。
『あんたに…、そうだね。やっぱり会えて良かった。』
「家康!」
家康もまた、怒号が聞こえる方に向かって歩き出す。
「やだぁ、やだよぉ!」
私だけが、この身に迫った闇についていけずにいた。