第5章 朝焼けよ、三日月を照らせ
『ありがとう、さん。俺です。』
天井裏から、眼鏡がぶらりと見えた。
『本当に佐助?』
『出てきてください。』
『お二人の殺気が凄すぎて、出れません。』
『…しかし、この状況。佐助殿という確証がない内は、どうにもできませんね。』
「…佐助くんである確証が必要なの?」
『あぁ。そうだよ。』
「佐助くん。…鳴かぬなら」
『鳴くまで待とう、ホトトギス』
「ふふっ。家康、三成くん。確実に佐助くんだよ。
今のは私達の世で有名な句だから。」
『へぇ。じゃあ、なんか特別な何かはない?
もう一つくらい。』
「えぇ…。あ、じゃあ。私達がいた時代の年号。」
『平成』
「あたり。間違いないよ。」
『はぁ、…ったく。出てきなよ。迷惑。』
シュタッ
『家康公の狼煙に気づいた仲間からの知らせで、こちらに着くのが遅くなり、すいません。
さん、ありがとう。助かったよ。』
『佐助様、お久しぶりです。失礼しました。』
「家康、佐助くん呼んだの?」
『あぁ、あんたの守りが欲しかったから。信長様も許可してたし。
…佐助。外の状況は?』
『えぇ、暗闇に紛れ城門を中心に囲まれています。』
『やっぱり。何人?』
『ざっとですが、多く見繕って百。』
『…多いですね。』
『仲間に相手の動きを探らせています。越後に戻らせるよりは、人数がいた方がいいかと。独断ですが、さんの護衛に数名つけました。』
『助かる。…相手は、朝焼けと共に打ってくるだろう。万が一があったら、佐助。を連れて越後に行け。』
『家康様!』
家康の言葉に、三成くんも私も驚いた。
「嫌だよ。私は、皆と共にいる。」
『馬鹿言わないでよ。…俺達は命を懸けてあんたと信長様の血を守らなきゃならない。』
『信長公の血?…まさか。』
『家康様、それはまだ公には!』
『佐助は信頼できる。の安全を任せられる。
佐助、は身籠った。万が一何かあれば、おぶって越後に連れていけ。』
「家、康。」
『さん。本当に?』
「うん、でも体調が良くなくて…」
『そうか、すごい。おめでとう。…そっか、良かった。』