第1章 貴方のために出来ること
生理が整い出したのと、体調が落ち着いて来たのを確認して、信長様は家康と政宗を領地の整備や政務の為に、一時帰城させた。
それが二月前。
無理をしないように、ゆっくりと。
傷跡が残らないように薬を塗って。
いろんな種類の食べ物を、よく食べるように。
私だって大人なんだからわかるよ。って拗ねてみたら笑って二人は、政務を整えて落ち着いたら、すぐ戻ると約束をして、私の頭を撫でてくれた。
二人のいない城になってから、一月が経つ。
忙しく立ち回る信長様を補佐する秀吉さん、光秀さん、三成くん。
変わらず過ごす広間での食事。
私も、少しずつ針を持つ時間を増やし始めた。
城下も、つい最近、一刻までって制限付きで秀吉さんの許可が出た。
咲と弥七さん、吉之助さんと体調を見て出歩くようになった。半年ぶりの城下は、相変わらず賑やかで、心配していたよ、と声をかけてくれる皆さんの優しさに涙が出た。
変わらない、普段の日常が戻ってきた。
私も自然と笑えるようになった。
そして、迎えた何度目かの生理。
規則的になってきたと思う。
だから、私は、こっそり妊活を始めた。
体温計も、アプリもないこの時代の妊活なんて、自分で作った暦に体調の変化をつけたりするくらいしか出来ないけど。
皆が本当は楽しみにしている事くらいわかるから。
自分で出来る事をやろうと思う。
私は
信長様の安らげる場所を守って、
家族を
未来を作りたい。
信長様の目指す世界を信じて、共に見たい。
だから、今日は。
寝ずに帰りを待っている。
天守の板張りで、ぽつぽつと灯る松明と夜空の星座を眺めて。
今日は月に一度の大切な日。
甘い雰囲気にするのは苦手だけど、でも口付けくらいはやってみようかな。なんて考える。
今の時間は、夜空の星とぽっかり浮いた月だけしか見てなくて、少しだけ大胆になれる気がするから。