第5章 朝焼けよ、三日月を照らせ
翌日の昼下がり。
信長様の号令で、秀吉さん、光秀さんが出陣して行った。恒例になりつつある腕輪の口付けと信長様への口付けをして、士気が上がったのを確認すると、信長様は私の頬を撫で出立した。
朝起きて、信長様が私の下腹部に口付けをしたのは、二人だけの内緒。
『大丈夫だ。御館様が出る暇もないくらいの早さで終わらせるから。』
出立前に、秀吉さんが天守にいた私にかけてくれた言葉を思い出す。
『お前は宿った命を守っていればいい。』
光秀さんが、頭を撫でた後に、頭にのせたお守りを胸元から出した。
『二人から?』
家康がお守りを見て呟いた。
「うん、秀吉さんと光秀さんから頂いたの。」
『二人からなんて…呪いじゃなきゃいいね。』
「のろっ!怖いこと言わないでよ。
二人からなんて奇跡みたいで嬉しいんだから。」
『光秀様と秀吉様から贈られたお守り、無敵ですね。』
「そうだね、ふふっ。」
『はぁ、また三成と留守番かよ。』
『…ですが、私も政宗様が到着次第、後方支援で出陣します。』
『あっそ。
さぁ、。入って。冷やさないように。』
「はい、はい。」
『はぁ。咲、この手を焼かせる奥方を連れていって寝かせて。』
『ふふっ、畏まりました。』
「家康、なんか失礼じゃない?」
『ほら、さっさと寝てて。診察するから。』
私は咲に連れられて、天守に戻った。
でも、三成くんと家康は外で何やら話してるようだった。
「あの二人が仲良く話してるなんて珍しいね。」
私がそう言うと、咲は優しく笑っていた。
『三成、癪だけど、俺がいない間の状況を教えて。
光秀さんが、不穏分子の動きが怪しいから気を抜くなって。確かに今、俺が連れてきた兵も少ないし、三成の兵と合わせても、せいぜい秀吉さんの兵の半分だ。
政宗さんが来るまでに、攻められてもしたら…
かなり不味い。』
『えぇ、私も危惧しておりました。ぜひ、お願いします。』
『には悟られないようにね。今、過度な気の張りは体に良くないから。』
『わかりました。』
『あと、佐助、呼ぶから。』
『佐助殿を…、どうやって呼ぶのですか?』
『…教えない。』
二人は一定の距離を保って、並んで城内に戻っていき、すぐに城内の庭先から細い狼煙が上がった。