第4章 咲の涙
『…ほう。知っていたか。』
『…予想をしていた、と言いましょうか。』
『抜かりない奴よ。』
『此度が終われば、祝いの宴といたしましょう。の命を繋いだ御子にお会いできることを楽しみにしております。
、お転婆の奥方は封印だ。無理をするなよ。咲と家康の言うことを聞き、体を休ませろ。』
「…ふふっ。」
『はっ。』
私と信長様は、光秀さんの話を聞いて目を合わせて笑いだしてしまった。
『光秀さん、秀吉さんみたい。』
『あぁ、光秀まで世話焼きになったか。』
『兄様と一緒にするな。』
『なっ、こっちこそ!』
『ねぇ、。無事に妊娠経過がよければ、兄様が二人出来るんじゃない?』
「政宗もいるから…三人じゃない?」
『五人だろ。』
「え、?」
『目の前の典医も本の虫も、貴様の世話を焼きたがる。』
「だって、家康。」
『私も、ですか!…光栄です。』
『誉めてないから。』
『…さて。貴様らは出陣の準備をしろ。咲は、天守の寝具を取り替えを休ませる支度だ。』
『はっ!…して、御館様は?』
『察しろ、兄様。ご夫婦の時間だ。』
『あっ、あぁ。』
『秀吉様、早く行きましょう。』
『あっ、あぁ。』
秀吉さんが、三成くんに袖を引かれ家康に背中を押されて広間を出た。いつの間にか咲もいなくて、広間は私と信長様だけになった。
一瞬視線が交わって、私は求め合うように抱きついた。
信長様も、同じように抱きしめてくれた。
『礼を言う。』
「え?」
『よく、身籠った。』
「でも、まだ油断はできないって…」
『必ず会えると言っていた。俺の背中を見たいと。だから大丈夫だ。貴様は体を休め無理をするな。
時が来たら、後ろ楯にも報告せねばな。』
「謙信様、来ちゃいますね。」
『祝い酒だ。』
私は信長様の手を握り、私のお腹に当てた。
『無事のお帰りを、お待ちしています。』
『あぁ、必ず戻る。』
私と信長様の影は、ひとつになった。