第4章 咲の涙
「え?」
私と信長様が振り返ると、手拭いに顔を埋めて肩を揺らす咲の姿があった。
「さくぅ…。」
『咲、心配をかけたな。』
あまりの泣き崩れた姿に、苦笑いをする信長様は優しく声をかけた。
『しっ、失礼を…』
「ありがとう、咲。巡り合わせが来たみたい。」
うん、うん。と体を揺らす咲を、私が抱きしめようとした時だった。
『しかし、信長様。』
静かな広間に、家康の声が響いた。
『なんだよ、家康。喜ばしいことじゃないか!戦前の吉報だぞ?』
『秀吉さん。まだ、口止めしてください。
は出血しています。そうだよね?』
「うん。」
『妊娠の初期に出血をすることは良くありますが、長く続くのはよい状態ではありません。安静にさせる必要があります。
は、初めての妊娠です。過度な期待や不安は体に直結します。』
『わかった。やはり、一気鎮圧と西への牽制には貴様はつれてはいかぬ。咲と共にを支えよ。』
『はい。』
『…口止め、とはいえ。良かったな、。
家康、いつになったら公に出来る?』
『そうですね。この出陣が終わる頃には、。落ち着いていたらですからね!』
『あぁ、政宗も喜ぶな!
…っとに。こういう大事なときに光秀は何処にいってるんだか!』
秀吉さんが、襖を開け光秀さんを探そうと立ち上がった。
ダダダダッ!
『みっ、光秀!』
廊下を走り向かってくる光秀さんを、秀吉さんは少し怒った様に呼び掛けた。
『廊下を走るな!…あのな、光秀。』
『其どころではない!』
『どうした、光秀?』
『光秀様?』
『ご報告致します。西の国境より、一揆が起きたとの報告が。また、その一揆は武装状態で、やはり西方の大名が裏で糸をひいている様子。猶予はありませぬ!』
『…喜びに浸らせてはくれぬか。』
『信長様。』
『三成?』
『只今、伝令より二日後には奥州を発つと知らせが。』
『よし!
秀吉、光秀。出陣の用意だ。三成は後方支援の準備をしいつでも援護ができるように準備。
家康は、政宗が来るまで城守との護衛。政宗到着後は、政宗に城守を任せ、補佐をしながらを頼む。』
『『はっ!』』
『信長様。』
『なんだ、光秀。まだ何か?』
『奥方様、ご懐妊おめでとうございます。』