第4章 咲の涙
『やはり、出向く必要があるようだな。』
の部屋から出た秀吉は、広間での軍議に参加していた。
先日議題に上がった西の国境で燻る一揆が、やはり起こりそうだと言うことだった。
『往生際が悪い。未だに機を狙っていたとはな。』
『光秀、領内の不穏分子は?』
『はっ、こちらも静観しておりますが、気を付けておくべきかと。』
『家康はいつ着く?』
『文では、駿府を出られるのが2日後ですから…三日後かと。』
『政宗は?』
『奥州と安土までの雪解けがまだな様子ですが、状況を見ながら精鋭を率いて、立つとの事です。』
『の事もある。家康が着き次第、改めて状況を整える。政宗の到着が読めないゆえ、予定を変更する。
秀吉、光秀は出陣の準備を。三成は後方支援の準備。
家康が来る前に何かあれば、光秀と三成と俺が出陣。
家康の到着次第、秀吉も合流のため、出陣。
政宗が着くまで、家康には城守との護衛を任せる。
…家康には、必要なら佐助を呼ぶ許可を出す。
よいな。』
『『はっ。』』
『御館様。』
『なんだ、秀吉。』
『の体調の件ですが。』
『まだ、そぐわないのですか?』
『すっきりとはしないようだ。医者を呼ぶようはなしたが、家康が良いと頑固でな。』
『家康が着き次第、まずはの診察を。』
『貴様の心配性は、治らんな。』
『…なにか病であれば一大事です。』
『わかっておる。着き次第、家康には診察をさせる。』
『はっ。』
※
秀吉さんが部屋から出てから数刻経ち、陽が傾いてきた。ほーっと動けずにいた私に声をかけたのは、咲だった。
『まぁ、湯飲みもそのままに。秀吉様と茶を楽しまれたのではないのですか? 如何されました?』
「…少し考え事してた。」
『体調は、いかがですか?』
「うん。余り、食欲がないかな。」
『信長様と秀吉様、光秀様は、今後の出陣為に軍備の準備と視察をなさるようで、夕げは先にとり天守で休むようにと、連絡がありました。』
「そっか。…じゃあ、雑炊とかそういうのでいい、かな。」
『…様。』
咲のいつもより低い声が、静かに部屋に響いた。
私は、咲が言おうとすることなんて、もうわかっていた。