第3章 梅の花 春の隣
【安土城 広間】
『光秀、報告を。』
『はっ。以前の戦の火元になった西の国境の状況から。織田傘下の大名が治めることになっておりますが、やはり西からの圧力などから、民の不満がつのっております。大名も、土地の者ではないため、十分に民の要望を理解できていない様子。』
『一揆が起きそうか?』
『あぁ、今はまだ静かだがな。雪解けが合図になるかもしれん。』
『また、国境であるがゆえに一揆が火種となり…』
『それに便乗するように、機を逃すまいと攻めてくるかもしれませんね。』
『そうだ。そうなれば、以前の西方の領地にであった頃に戻りたいだのと言う馬鹿な奴等が必ず現れ、敵方に寝返る。』
『…面倒なことよ。』
『信長様、もうひとつ報告が。』
『なんだ?』
『織田領内での上杉武田との友好協定に意を唱えるものは減りましたが、我らが西の制圧に目を向けている隙間を狙って、攻めようとする者が。』
『未だにか!?』
『秀吉、皆が全て納得する世などあるものか。』
『やはり、守りを固めるべきでしょうね。』
『いかが致しますか?』
『…雪解けも近い。呼び戻すか。二人に領内の政務状況の確認を致せ。』
『はっ。』
『光秀。貴様の忍びは、まだ西に?』
『勿論。』
『では、怪しい動きがあれば、報告。すぐに出陣する。』
『御館様が、ですか?』
『ダメか?直々に誰に楯突いているかをわからせてやらねばなるまい。あれは、今後の天下の為の重要拠点。磐石な状態にせねば、駒が進まぬ。』
『家康、政宗が間に合えば二人を連れ、後方支援は三成。光秀は、このまま任務続行。
秀吉、貴様は城守と奥の護衛だ。良いな。』
『…はっ。』
『早速、お二人に早馬を送ります。』
『…くくっ。』
『『!?』』
信長、秀吉、三成が突然笑い出した光秀に目を奪われる。
『光秀、なんだ?気持ち悪いぞ?』
『…の言った通りになったな、と思ってな。』
『の?』
光秀は、広間に来る前にと話したことを振り返りながら信長に報告した。
『ほう、あやつもようやく安土の奥らしくなってきたか。』
『ですが、は政など考えさせたくはありません。』
『ふっ、世話焼きの兄様らしい。だか、あいつは自ら俺の指南を受けた。信長様の隣を歩くためにな。』