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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第19章 虹色の明日へ


『秀吉、そろそろか。』

『はい。見えました。』

「え、信長様、まだ神社は先…」

『ふっ、その前に御披露目があるだろう。』

「え?」

くっと、信長様が顎で先を示す。
そこには… 
人だかりから少し離れた後ろの方に、輝真くんのお母さんが立っていた。

「あっ。」

『…止まれ。』

隊列が、静かに止まる。

『輝真。』

『はい?』

『ここへ。』

お母さんが立つ場所で隊列が止まると、信長様は輝真くんを呼び寄せた。
何が始まるのだろう、私も、そして周りの人達も目を丸くする。
でも、私以外は皆落ち着いていて、何をするか知っているようだった。

『輝真の母だな。』

『はっ、はい。』

輝真くんのお母さんは、駆け出して前に膝を付く。

『あれからほぼ一年。1日も欠かさず鍛練をし、立派に育っている。安心せい。』

『はっ、ありがとうございます。』

お母さんは、地面に額が付くほど頭を下げた。

『表をあげよ。』

信長様の声にお母さんは頭をあげ、輝真くんと信長様を見た。

『輝真。』

『はっ。』

輝真くんは、信長様の側で片膝を付いた。

『明日より、貴様は奏信の護衛をかね城勤めとする。城勤めを覚え、鍛練をしながら奏信につかえよ。』

「えっ。」

『は、はい!有り難き… 幸せ。』

『ふっ。輝真。精進し母に恩を返せ。よいな。』

『はっ。』

『あっ、ありがとうございま…す。』

輝真くんのお母さんは、泣き崩れてしまった。
町人の子供が、城勤めだけじゃなく世継ぎの護衛。
大出世なんだろうな。

『秀吉、行くぞ。』

『はっ、輝真、戻れ。』

『てる…』

小さな声でお母さんが輝真くんを呼ぶ。

『母ちゃ…。母上、行って参ります。』

『ふっ、うっ。あぁ。立派に、な。』

輝真くんは、静かに立ち上がり隊列に戻った。

『なに、あんた。泣いてるの?』

家康が私を覗き込む。

「だって、なんか感動したから。」

『ふっ、さぁ。行くぞ。』

さぁっと、初夏の風が吹く。
一人の少年の新たな門出を祝うように、木々が葉を揺らした。

神社について、厳かな雰囲気の中で祈祷が始まる。
輝真くんが運んだ護り刀も祭壇に並ぶ。

終わって外へ出ると、境内は人びとで溢れていた。





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