第19章 虹色の明日へ
『隠せないでしょ。髪を下ろさないと。』
「…目立つ?」
『『目立つ。』』
政宗と家康が声を揃える。
「だよね…。」
ちらりと信長様を仰ぎ見ると、満足そうに微笑んでいた。
『今日の奥方は、美しいからな。牽制ということだろう。』
後ろから意地悪な声が聞こえる。
『はぁ、面倒。』
政宗は後ろの光秀さんと目を合わせて笑い、家康は盛大なため息を付いた。
「あ、ところで輝真くん。羽織似合うね!…緊張してる、ね。」
『だっ、大丈夫か?お前。』
咲と湖都ちゃんの後ろにいる輝真くんを政宗と覗くと、一点を見つめつ硬い表情の輝真くんが立っていた。
『今日は、あいつにとっては大役でしょ。…落とすなよ。それ。』
家康が横目で輝真くんの手元を見た。
『輝真。練習通りに歩けば大丈夫だ。よそ見をせずしっかり歩け。』
『はっ、はい!秀吉様。』
『輝真、今日の参列に加わる事やお役目、母に言ったのか?』
政宗が腕を腰に当てて、輝真くんに尋ねた。
『いえ、秀吉様より話さないようにと言われていましたので…』
『当たり前だろ?いくら母だとは言え警備態勢が漏れては困るからな。しかも、輝真は、祈祷をして頂く奏信様の護り刀を持つ大役。話さないように言ってある。』
『へぇ。じゃあ母が見たら驚いて…泣くかもな。』
「だっ、大丈夫。練習通りに、ね。ほら、みんなも…言いすぎちゃダメだよ!」
『輝真。』
『はっ、はい!』
信長様が背を向けたまま、輝真くんを呼んだ。
『頼むぞ。』
『はい!』
威厳のある低い声と、まだまだ幼い高い声が響く。
周りの武将達の口元が弧を描き出す。
『出立致します。』
三成くんの声を合図に、私たちは歩き出した。
※
城下はお祭り騒ぎだった。
四方八方からの歓喜の声。『御世継様、万歳!』と手をあげる方々。手を降る人達。奏信は、それに動じず、信長様を見つめている。時折聞こえる、武将達への黄色い声。
いつもなら、手を振る政宗も今日は真剣で、ちょっと笑ってしまう。
『なに笑ってんの?緊張感ないね、あんた。』
「だって、みんな真剣だから。」
『当たり前だろ?』
『いつもこうだといいんだがな、政宗。』
『ったく、お前が言うな。光秀!』
『歩調は早くないですか?様。』
「あ、うん。大丈夫。ありがとう、三成くん。」