第19章 虹色の明日へ
「輝真くんは何色が好き?」
『…あまり考えたことがありません。奥方様が選んでください。』
「おっ、奥方様って!…って呼んでよっ!何色がいいかなぁ?」
私は反物を代わる代わる輝真くんにあてていく。
出来るだけ皆の羽織の色と被らないように、そんなことを考えながら生地を選んでいた時だった。
『あっ。』
「えっ、何?」
『いえ、…何も。』
「好きな色あった?」
輝真くんの目がチラチラと泳いでいる。
『申してみよ、輝真。』
『あっ、はい。…あの赤いような色は、母上がよく着ていた着物の色に似ています。』
「…えんじ色。じゃあ、えんじの着物に着物に藍色の袴にしよう。羽織は…」
『羽織など、勿体ないです!十分です。…ありがとうございます。』
『そんなことを言うな。せっかくの機会だ。』
「そうだよ。秀吉さんの言う通り!…羽織は深緑でいいですか?」
『あぁ。。ありがとう。御館様、ありがとうございます。』
それから、呉服屋さんが採寸を終え、輝真くんを連れて秀吉さんが広間から出ようとする時だった。
『輝真。』
信長様が上座から彼を呼んだ。
『はい。』
『此方へこい。奏信だ。抱いてみろ。』
『「『えっ。』」』
輝真くんも、私も秀吉さんも驚いたが、信長様は普段通りで。
秀吉さんに促され、輝真くんは信長様の側へ座った。
『貴様が護る、奏信だ。』
『そう、…しん、さま。』
「宜しくね。輝真くん。」
『貴様なは此度の参列の折り、役目をやろうと思う。』
「役目?」
私が首をかしげると、信長様は優しく笑った。
そして輝真くんに、一つの命を与えたのだった。
※
『御綺麗ですよ、様。』
奏信の百日祝いを兼ねた御披露目の日。
私は久しぶりに、少しだけ豪華な羽織を着て髪を結い上げた。
簪は、五色の鶴のお気に入り。
少しだけ化粧をしていると、襖から声がかかった。
『出来たか?』
「お待たせしました。信長様。…変じゃないですか?」
『問題ない。』
「奏信は眠っているのですね。」
信長様に抱かれた奏信は、すやすやと眠っている。
よほど抱き心地がいいのだろう。
信長様が抱くと滅多に泣かない奏信の頬を優しく撫でた。