第19章 虹色の明日へ
『御世継ぎが無事に成長されるのを願って、祝い事を取り仕切る。幸せこの上ないぞ。気合いも入るってもんだ。』
「ありがとう。皆に可愛がって貰えて幸せだな。」
奏信の寝ている方をチラッと見る。
兎柄の敷き布団に大の字に寝ている姿は、やっぱり信長様の子なんだと感じる。
「奏信、ぐっすりだね。」
『はい。』
湖都ちゃんも奏信の寝姿を見ていたようで、目を合わせて微笑んだ。
「…ところで、家康が歯形め石をって話してたけど、歯形め石って何?」
『…知らないのか?』
秀吉さんが目を丸くした。チラッと見れば、咲や湖都ちゃんも驚いたようだった。
「あ、うーん。初めて聞く…、かな。」
『歯固めは、【石のように強く、丈夫な歯が生えるように】という願いを込めて行う儀式です。
まず、「歯固め石」と呼ばれる小石を3個用意して、脚付きの器である高坏(たかつき)へ入れ、お膳の中央へと置きます。
そして、高坏に置いた石に箸を触れ、「丈夫な歯になりますように」と祈りながら、箸を赤ちゃんの歯茎にそっと当てるのでございますよ。』
「へぇ。そうなんだ。」
咲が優しく分かりやすく教えてくれる。
私が産まれた平成の世に比べ、やはりこの時代は沢山のしきたりや儀式めいたことが細かに多い。
聞き慣れない言葉が、時々出てくれば、こっそり咲に聞いて覚える。それが習慣になっていた。
『箸揃え一連は、神社参りの後にしようと思ってる。
神社参りは、俺たち全員と弥七、吉之助、咲、湖都、そう様に関わる皆で行く予定だ。
城下へのそう様の御披露目を兼ねているから、正装するつもりだ。咲と湖都もそれに合わせて、着るものを考えてくれ。』
『『畏まりました。』』
『…それでな。。』
「あ、うん。なに?」
『信長様が、そう様に関わる者、皆で参るなら、輝真も呼ぶと仰っているんだ。』
「わぁ!…輝真君、秀吉さんの御殿で鍛練してるんだよね?」
『あぁ。三成に読み書きや算術の指南もうけてる。』
「すごいなぁ。大きくなっただろうね。」
『あぁ。真面目に頑張っているぞ。
それでな。輝真の正装を準備するために呉服屋に頼むんだが、に生地選びを頼みたいんだ。
輝真の母親に準備させるのは、さすがに…な。
そう様の御披露目なんだが、輝真の勇姿を母親に見せてやりたいんだ。』