第18章 明日がくるなら
『奏信様、か。いい名だ。』
『ありがとう、政宗。
私はなにも知らないままこの安土に来て、みんなに支えられて今があります。
まだまだ、妻としても至らないことも沢山あります。
初めての子育ては、不安だらけ。
でも、皆とこれからも一緒に沢山の幸せを見つけて喜び合いたい。
これからも宜しくお願いします。』
私が頭を下げると、秀吉さんが咳払いをした。
『奥方が家臣に頭を下げるなど、しなくていい。』
『ほんと、稀有な奥方。』
『だから、いいじゃねぇか!』
『あぁ、からかいようがあるというものだ。』
『様。これかも御支え致します。』
『皆、今宵は奏信と歩む新しい明日に向けての結束を固める宴をする。無礼講だ。皆、楽しむが良い!』
『ははっ。』
『ふぁっ、ふあぁー。』
『奏信、どうしたのだ?』
「おむつかな?お腹すいたかな? 咲、湖都さん。」
『えぇ、様。こちらへ。』
『皆、今宵は世継ぎと共に歩む新しい明日への絆を深めるための宴をする。無礼講だ。』
『ははっ。』
奏信の泣き声が広間に広がる。
誰もがこの声を、歌声のように聞いていた。
※
夕暮れから始まった宴は、賑やかなものになった。
政宗の気合いの入った料理がならんで、私の大好きな卵焼きや煮物は別のお膳で運ばれた。
『しっかり食って、いいお乳を飲ませてやれ。』
「政宗、お乳って!」
『間違ってないだろ?』
『…政宗さん。せくはらっていうんですってよ。の世界では。』
「そうだよ、逮捕されちゃうんだから。」
『では、政宗は体がいくつあっても足りないな。』
『おい、言うじゃねぇか。光秀!…って、酒をすり替えるなよ!』
『疑り深いやつだな。いつそんなことをした?』
『…光秀さん。いつもでしょ?』
私の周りには、いつの間にか光秀さん、政宗、家康が座っていた。
「秀吉さんは…、うわっ。やってる。」
信長様の隣で、秀吉さんは泣きながら信長様の腕の中の奏信を撫で、熱く何かを語っている。
ちょっとだけ鬱陶しそうな信長様が、可愛くて笑ってしまった。
『三成は、咲と湖都と仲良さそうだな。』
「わぁ、ほんとだ!」
『家康、いいのか?』
『ぶっ!なっ、なんですか。政宗さん。藪から棒に!』