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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第18章 明日がくるなら


翌朝、軍議が終わる頃、私は広間に向かった。
腕のなかには、すやすや眠る暖かな温もりがある。

時空のいたずらで500年の時を越えた私は、様々な出会いと出来事を乗り越えて、母になった。
500年先にいる母には抱かせてあげられない寂しさは、きっと消えないけれど、きっと未来に繋がっているだろう陽射しに、赤ちゃんを向けた。

「元気に産まれたよ。強く育てるから、見ててね。」

小さな手がおくるみから抜け出した。
もうその手は開かれていて、夢も希望も放たれていた。
素敵な繋がりに恵まれて、手放したものを集められるように。
これから、この子の人生が始まるための名前が御披露目される。

私は、暖かみの増した空気を吸い込んだ。




『…軍議は終いだ。これより四半刻後、世継ぎの世話役と、幼名を披露目する。』

『『ははっ。』』

『秀吉、四半刻後に城勤めの皆を広間に集めよ。』

『御意。』

『いよいよだなぁ。家康。』

『政宗さん、今日の宴の料理も取り仕切るんですか?』

『当たり前だろ。の好物は俺が一番知ってる。』

『…それにしても、どんな名前にしたんですかね?』

『が考えたんだろう? 楽しみだな。』

城勤めの家臣や女中たちに声を駆け回る秀吉と三成を尻目に、光秀、政宗、家康は一息つくのだった。


『ここにいたのか。』

「信長様!…ほら、父上様よ?」

『起きているのか?』

「つい先程、起きました。まだ寝ぼけてるかな。」

信長様は、私の腕の中から抱き上げた。

「慣れましたね。」

『ふっ。俺を誰だと思っている?』

「ふふっ、…そうでした。」

自然と視線が絡み合って微笑み合う。

『行くぞ。』

空いた片手で私の手を握ると、信長様は広間に向かって歩き出した。
広間の手前には、秀吉さんが待っていた。
広間に入れない人がいないように、隣の部屋の襖も開けられていた。
信長様が入れば、誰もが頭を下げる。
いつ見ても背筋が伸びる緊張感。

上座から一段下がった場所に秀吉さんと光秀さん、
その真後ろに、政宗、家康、三成くん。

また一段下がって咲、弥七さんと吉之助さん。

そこからはずらりと家臣や女中さんたちがそろう。


『御館様、まずは御世継ぎの世話役のご紹介を。』

『あぁ。』

『咲。』

『はい。』






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