第15章 幸せな孤独
「え?」
『現代人のさんが戦国時代で出産するんだ。普通より不安定になっても仕方がないと俺は思う。
現代の医学や技術は、この時代はまだ夢物語だから。
命の危険も、たぶん半端ない。』
「マタニティーブルー。私最近、理由の付かないイライラで沢山咲に八つ当たりしてた。」
『そう。』
「さっき、珈琲とポテチもってきてって言っちゃった。」
『…言っちゃったね。』
「マタニティーブルーって現代の言葉を使えば、仕方ないって言えることでも、咲は知らないでしょ。最悪だよね。」
『いいんじゃない? すごいと思うよ。』
「なにが?」
『だってさ。咲さんが困るだろうってわかっててもさんは言ったわけでしょう?
それって、本当に信頼してるからなんじゃない?腹を見せて言い相手って言うかさ。』
佐助くんが話す一つ一つの言葉に、また涙が溢れてくる。
『本当にお母さんみたいな存在なんだね。もっと甘えていいんじゃないの?
それと、マタニティーブルーって誰もがなれる訳じゃ無いんだよ。』
「あ、うん。マタニティーって、言うくらいだもんね。」
『そう。マタニティー。妊婦さん。
ねぇ、さん。君はマタニティーブルーになれたんだ。ということは、もう君は体だけじゃなく心も母親になりつつあるんだ。世継ぎを産む責任を感じるってことは、それだけで母親になれてる。
大丈夫だよ。今の君と、今の信長様を選んで、もうすぐやってくるんだ。
自信もっていいんじゃないかな?』
「うんっ。うん。ありがとう。佐助くん。」
『とんでもない。…ところで、最近の信長様は忙しい?』
「うん。朝と夜しか会えないくらいで、かなり予定も詰め込んでるみたい。」
『やっぱりか。』
「え、なにかあったの?…まさか戦?」
『いや、それはない。謙信様と信玄様がかなり目を光らせてるからね。内からも外からも守られてるんだから、やっぱりさんはすごいよ。』
「じゃあ、なんで忙しいのかな?」
『…それは、もうすぐわかるよ。』
「へ、へぇ。」
『ところで、珈琲だけど飲みたい?』
「え?あるの?」
『俺が作った玄米珈琲なら、渡せるよ。風味と味も似てるかな。』
「ほんとっ!玄米珈琲かぁ。聞いたことある!」
『飲んでみる?』
「うん!」