第14章 春の輪廻
「こんにちは、はじめまして。です。
奥州から遠い安土まで来てくれてありがとうございます。
皆さんも怪我はないですか?」
『ご心配には及びません。』
「故郷で待つご家族のために、必ず生きてくださいね。」
『はっ!』
「政宗を、これからも助けて奥州と安土を守ってください。」
『はっ、有り難き幸せっ!』
『いいぞ。戻れ。』
つむじ風が一瞬草木を舞い上がらせた。
『本当にやっているのだな。』
『あぁ、次はお前の配下の番だ。』
「光秀さん、お願いします。」
『ふっ、久兵衛。』
『はっ。皆揃っております。』
光秀さんの忍は、政宗と家康より多くて圧倒された。
『様、お久しぶりです。』
「久兵衛さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」
『はい。お陰さまで。この度はご懐妊おめでとうございます。』
「ありがとうございます。皆さんも、いつもお役目ご苦労様です。安土を守ってくれてありがとうございます。」
『私どもにまで…、本当に慈悲深い。』
「あれっ、女の人もいるんですね。」
『あぁ。あれは主に、城下にふらっと出掛けるお前に付けている。これからは、産室や御世継ぎと過ごされる部屋に付けるつもりだ。』
「そうなんですか。出掛ける時にいたんだ。ありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
時々、声懸けてくださいね。」
『…はい。』
『では、様。我らはこれで。』
「はい、皆さん体に気をつけて。」
『下がってよい。』
静かに風が舞い上がった。
『次は軒猿か? 何処まで手懐けるつもりだ?』
「手懐ける、だなんて、ひどい!」
『俺達は光栄ですよ。』
「佐助くん!…大丈夫?」
『まだ、少し唇の感覚がないよ。名誉の負傷さ。』
『では、俺は謙信殿の酌でもしてこよう。』
佐助くんは、光秀さんがいなくなるのを確かめてから、パチンと指を鳴らした。
『今日来てる俺の仲間は10人。前にいる6人があの時に政宗さんと戦って、朝げをご馳走になってる。後ろの4人は、謙信様が後ろ楯宣言をした時にいたよ。」