第33章 ○その個性の名は
朝のホームルームが始まったと思ったら、あっという間にお昼の時間になった。
『ふえぇ〜…』
「大丈夫?リルルちゃん…」
授業中なんだかんだ緑谷くんと接点があって、内容は全然頭に入らないし、精神がどっと疲れた。
「とりあえず食堂いこー!」
『なんだか嫌な予感がするけど…』
悪い予感ほどあたるというけど本当だった。
いや悪くはないんだけども。
「今日はよく一緒になるね、癒月さん」
『そ、そうだねっ…』
テーブルを挟んで向かい合わせに座っている。
隣はお茶子ちゃんだけど、前には緑谷くん。
席を探そうと2人で探していたけど、今日はやけにすごく混んでいて、空いていたのは緑谷くん、轟くん、飯田くんのテーブルしかなくて、お邪魔させてもらった。
「悪い、緑谷。先生に呼ばれてるから先に戻ってる」
「俺も、八百万くんと学級委員の用事があるから先にあがらせてもらうよ」
最初は、わいわいと5人で食べていたけど、途中で轟くんと飯田くんが席を外した。
え、えっ、ちょっと待ってこの流れってもしかして…
「ごめん、リルルちゃん!私も先生に呼ばれてたんだった!また後で!」
『えっ、ちょっ、お茶子ちゃん!』
そういうとお茶子ちゃんも急いで食べると食器を片付けに席に立ってしまった。
「なんか、みんな忙しそうだね…」
『…そ、そうだねっ』
「癒月さんは、お昼休みに用事とかあるの?」
『ないけど…』
「じゃあゆっくり食べれるね」
『う、うんっ…』
パスタを口に運ぶけど、味が感じられない。
それもそのはず、私が食べてるところをじっと見られていて、集中できない。
緑谷くんは食べ終わったようで、私を待っていてくれていた。
『…あ、あのっ先に行っててもいいよっ、食べるの遅いし…』
「せっかくだから、待ってるよ、少し聞きたいこともあるから」
『聞きたいこと…?』
「うん、食べ終わったらでいいから」
いや、すごく気になるからすぐにでも聞きたい、なんて言えるはずもなく、味のしないパスタを無理矢理口に押し込めた。