第39章 吸血鬼をひろいました -出会い編- / パロディ甘
その声を聞いた瞬間、夢じゃなかったと実感する。
『…い、いやっ、痛っ』
反射的に逃げようとして、急に動くと首筋が痛んだ。
「あ、動かないで…傷口がまだ塞がってないから…」
そう言われて首元に手を当てるとちゃんと手当がしてあった。
「ご、ごめんなさいっ、お腹空きすぎてて思わず…」
声のする方を見ると、ベッドのそばで正座して項垂れている様子は、本当に反省しているようで、さっきとは別人のようだった。
『…え、と…あ、あなたはもう大丈夫、なの?』
「は、はい…まだ完全じゃないけど、なんとか、あ、僕は緑谷出久といいます」
『わ、私は、癒月リルルです…』
ことの経緯を緑谷くんは話してくれた。
と言っても彼はまさかの吸血鬼だってこと。
ここ数日、血を飲んでいなかったことしか話さなかったけど。
『そっか…でも、良かった』
「…えっ?」
『少しでも元気になってくれて』
「……っ、癒月さんは優しいですね、それなのに僕は初対面の女性にひどいことを…」
『びっくりしたけど、もう大丈夫だからっ、えと緑谷くんはこれからどうするの?』
「どうしよう…本来であれば、帰らないといけないんだけど…ぶつぶつ」
ぶつぶつと独り言を呟く緑谷くん。
普通にしてるとその辺の男の子と変わらないのに。
そして自分でもびっくりするくらいの提案をしてしまう。
『あの、行く宛がないなら…というか緑谷くんが、良ければなんだけど、ここに住む?』
出会い編 End