第32章 デート(物騒)の誘い
***ジョーカー視点***
『で~?どこで何するつもり~?』
「ちょっと皇王庁でデート」
『…セリフだけ聞いてると敬虔な信徒なんだけどな~』
ちゃぶ台をはさんだ向かい側で、ミヤはこめかみを押さえた。
ちゃんと本来の意味で伝わってるようで何よりだ。
『というか、男2人と女1人でデートって、私ただの悪い女じゃん~』
「ほぉ?なんで男2人だと思った?」
わざわざ尋ねる俺に、ミヤは半目でこちらを見る。
くくっ、やっぱり楽だなー。こいつと何かをするのは。
『行先が皇王庁。んで、私に男装させるってことはヤバイことをしに行くんでしょ~?なら、本来誘うべきは私じゃない。…紅を誘いに来たね?』
「ご明察」
拍手つきで褒めたが、ミヤの表情は変わらない。
『で、なんでそこから私も誘うってことになんの~?』
「備えあれば患いなし、ってな。それにせっかくの機会だ。来るだろ?」
『…そっち側にはあんまり興味ないんだけど』
ふむ、まだ乗ってこねェか…。
ま、諦めるつもりもサラサラねェが。
「オイオイ、いずれ必要になる情報だってのに釣れないじゃねェの」
『必要…ねぇ…。…はぁ、紅も行くなら否定しきれないか。それなら私は情報収集のほうに注力させてもらうよ』
「あァ?戦闘面に不安でも?」
『いんや~?ケンカ相手が減るとなったら、紅が黙ってないだろうからね~』
「どんな理由だよ!」
思わずツッコんだが、ミヤは、当然のことですが何か?という顔だ。
最強サン、どんだけ暴れん坊なんだよ…。
気を取り直して、襲撃する日時と、集合場所を伝える。
『もー…、その日は非番だから羽を伸ばそうと思ってたのに~…。日中に寝ておかないと、次の日キツイじゃん~』
両腕を上げ、グッと伸びをしたミヤは、吐き出す息にのせて不満をこぼした。
「そいつァ悪ぃな」
『思ってないことを言わんでよろしい』
ピシャリと一刀両断するミヤにくつくつと笑う。
思うわけねェだろ。こちとら、わざわざ、アンタが非番の日を選んでんだからな。