第32章 デート(物騒)の誘い
***聴視点***
ジョーカーの突撃!お宅訪問!をどうにかこうにか飲み込んで。
夕暮れの時間まで各々自由に過ごし。
さすがにこの状況で夕食を1人で食べる、ってのはおかしいよね?と夕食を振る舞ったら
「もっとガッツリしたのが食いたかった」
と言われたので、その頭にお盆をお見舞いした。
ったく、人が優しくしてやってんのに…。
紅の「…うまい」とか、紺兄の「聴を嫁にもらうやつは幸せもんだな」とか、お世辞でもいいから、嬉しくなる言葉が恋しいです…。
腹いせに洗い物を全部ジョーカーに押し付けて、私は自室に引っ込んだ。
これから先のことを考えて、もろもろの作業を前倒しで進めることにする。
しばらくすると、なんの前触れもなく後頭部にカードが飛んで来たため、首を傾けて回避。
目の前の壁に音もなく刺さったカードは、焦げ跡を少し残して消えた。
『刺さったらどうするのさ~』
「刺さるわけねェだろ」
仕方なく部屋の入口に目を向けると、笑みを浮かべたジョーカーが部屋に入ってくる。
「今更だが、どこぞの天才科学者サマとは大違いだな」
天才科学者サマ、と聞いて、リヒトさんに関する記憶と情報を引っ張り出した。
…いやいや、そもそも私とリヒトさんを比べんな。
『リヒトさんは、いつか消されそうだよね~』
私が敵側だったら真っ先に消すな、と思ったので、何の気なしに言ってみたが
「物騒なこと言うねェ」
意外にもジョーカーから同意は得られなかった。
少しは守るつもりがあるのか、はたまた、私の想定よりもリヒトさんが丈夫なのか…。
「…さて、俺はそろそろ最強サンを誘いに行くとしますかね」
私の中身のない思考は、ジョーカーの発言によってぶった切られた。
気づけば、外は暗闇が支配し、降り出した雨が浅草に静寂をもたらしている。
あはは、密会日和だねー。