第59章 幕間 その5
***聴視点***
後日。
「さてと……そろそろシンラたちが来るだろ。あいつら早ェからな」
「若…、第4のアーグが…」
詰所の玄関で会話をしている紅と紺兄が見えて近寄ったら、そんな会話をしていた。
第4の大隊長の死は自殺として処理されることになったらしい。
なんでもドMだから、だとか。
なんだそれ。意味が分からん。
全身を杭で貫かれた変死体、なんて、自殺とは到底思えない惨状だろうに。
「またここにも白装束が来るかもしれねェ…。紺炉、聴、俺に黙って勝手なことすんなよ」
『明日は我が身、と思えば、さすがにね~…』
この間の襲撃は本当に舐められていて良かった、と思うばかりだ。
「シンラたちが言ってましたぜ。“皇国は1つになる時だ”って」
そんな紺兄の言葉に
「浅草や第8にとっていい話なら構わねェけどな」
紅はほんの少し声を固くして答えた。
それを聞いて思わず
『いや~、白装束が仕掛けてくるのが先でしょ~』
そんな机上の空論を持ち出されても~、という気持ちを全面に出して言ったら
「聴、お前なァ…」
紺兄に呆れられた。
『だってさぁ~…。“アドラリンク”した人間が襲われている、とするなら、次に狙われるのは第1の大隊長でしょ?でも、私だったら、殺すんじゃなく利用する方法を考える』
「利用?何に使うってんだ?」
思いついたまましゃべっていたけど、紅に問われて、真面目に考えてみる。
『邪魔者の排除、とか』
「つまりなんだ?第1のが敵になるってか?」
ギョッとした紺兄に言われて、自分で言ったにも関わらず、そりゃ一体どういう状況だ?と思ってしまった。
「どうやったらそんな状況になんだよ」
紅にも否定されてしまったので、この案はボツである。
んー、いい線いったと思ったんだけどなぁ~…。