第32章 デート(物騒)の誘い
***聴視点***
ん…?この気配は…、ジョーカー?
今にも雨が降り出しそうな、薄暗い昼下がり。
実家で薬の下準備をしている最中、鍛錬場に現れた気配に手を止めた。
パパッと片付けて鍛錬場に続く廊下に顔を出すと、煙草の煙をくゆらせながら、怪しい笑みを浮かべる男が1人。
「よぉ、ミヤ。夜まで邪魔するぜぇ」
…なんて?
『…いろいろ聞きたいことはあるけど。夜になったら何するつもり~?』
「細かいことはいいじゃねェの」
『良くないわ~。全然良くないわ~。事と次第によっては容赦しないよ~?』
「この町には何もしねェよ」
うーん、この町には、って言ったねぇ…。
「そう邪険にされると、傷つくなァ。こっちは、ミヤ、として誘ってるってのによォ」
『…は?』
わざわざ強調された単語に一瞬思考が止まり、次いで急速に動き始めた。
『ふーん…。話を聞こうか』
招き入れる姿勢になった私にジョーカーは笑みを深める。
「そうこなくっちゃな」
ジョーカーの手のひらの上で踊らされてる感も否めないけど。
この男との付き合いに必要なのは、利害の一致か等価交換。
目的を果たすまでの行程は…、楽しんだもん勝ちだと私は思っている。
さて、今回は鬼が出るか蛇が出るか…。