第30章 その計画は最初から破綻している
***紅丸視点***
聴はどんなやつかと聞かれたら。
聴のことをよく知らねェやつは、穏やかな人だの、優しい人だのと宣う。
浅草の人間に聞けば、頼れるやつ、あるいは、怒らせちゃいけないやつ、と答えが返ってくるだろう。
紺炉に聞けば、可愛い妹分だが底の知れないやつ、あたりか。
ちなみに俺は、容赦のねェやつ、と答える。
「若、聴から連絡がありやして。“遊びましょ”だそうですぜ」
「あ?…やけに懐かしいじゃねェか。場所は?」
「第8の管轄のようで。目印も昔と同じように、と」
聴が浅草から出ていくよりも昔。
あいつの告げる“遊びましょ”は、“喧嘩になるかもしれないけど来る?”と同義だった。
今日は第8の嬢ちゃんたちと女子会だから、と出て行ったはずだが、何か引っかけたらしい。
纏を飛ばして、浮かんでいる炎のもとに着くと、聴が6人の男に取り囲まれていた。
当の本人は、そんな状況でも目の前の男と平然としゃべっていて、思わず笑っちまう。
挨拶代わりに3人を吹っ飛ばし、連中を挟んで向かいに降り立つと
『ご所望の破壊王です』
と聞こえた。
…どうやら俺の客らしい。なら、俺が全員相手しても構わねェよな?