第30章 その計画は最初から破綻している
***聴視点***
「御同行願おうか」
常に1番近くにいた気配が声をかけてくる。
数は6人。身のこなしからして、多少は手応えがありそうだ。
『物騒ですね…。私のことを、ご存知で?』
「フン。知っているからやっている」
『人違いの可能性は?』
「ないな」
分かり切った質問を重ねて、相手に会話の意思があるかどうかを確認する。
端的ではあるが答えが返って来て、相手の余裕を伺わせた。
『誰かから恨まれる覚えはないんですが』
「異教徒がよく言う」
『あぁ、なるほど。それなら、あるべき場所に戻りますので、ここを通してください』
「愚かな。貴様らは存在そのものが罪なのだ。場所など問題ではない」
我ながら斜め上の発言をすれば、嘲笑を孕んだ声が返ってくる。
ふむ、この調子なら、もう少ししゃべってくれそうだ。
『つまりここが処刑場だと?』
「そうしたいのはやまやまだが、貴様は餌だ。今少しばかり生かしてやる」
『餌、ですか。それなら良かった』
「…なに?」
相手が訝しんだところで、私の背後にいた3人が吹っ飛び、目の前の3人の頭上を通過。
そのまま綺麗な放物線を描いて落下し、したたかに地面とキスを交わす。
無事だった男たちは空飛ぶ身内を目で追いながら全員振り返り、そして目を見開いた。
『ご所望の破壊王です』
「てめェから喧嘩に誘われるなんざ、何年ぶりだ?」
そこには纏を片手に楽しそうに笑っている、新門紅丸その人がいた。