第28章 弄(もてあそ)んだわけではない
不自然に動いたそれは、やがて私の額に2本の角を、背中に蝙蝠のような羽を、腰あたりに尻尾をはやす。
尻尾の先はトランプのスペードのようになっていて、呑気にも、器用だなぁ~、と思った。
…ジョーカーがその気になれば、私は吹っ飛んじゃうんですけどね、えぇ。
『失礼だな~。わざとじゃないって~。調査したときに見つからなかったんだから仕方ないでしょ~』
悪魔だか、小悪魔だか知らないが、弄んだ覚えはない。
「ショウ クサカベに的を絞って探してこねェところが小悪魔的だ、っつってんだよ」
なるほど、小悪魔のほうだったか。…いや、そうじゃない。
『皇国にどれだけ人間がいると思ってんのさ〜…。そんな、砂漠から一粒の砂を探す、みたいな面倒なこと、するわけないでしょ〜』
あの情報だって、それなりに骨が折れた。簡単に言わないでもらいたい。
それ以上言うなら、もう協力しないけど?と視線と態度で訴える。
ジョーカーは不服そうにしながらも煙を解いた。
「第8がネザーにもぐれば、奴らは確実に接触してくる。近くで見物する気は?」
『ない』
間髪入れない私の返事に、ジョーカーは肩をすくめて立ち去っていく。
だって、私のケンカじゃないし、浅草も関係ないし、深く関わるつもりもないし。
そんなやりとりをした数日後、シンラくんが第6に担ぎ込まれたらしい、と紺兄から聞いた。
ありゃ…。借りを返す機会を逃しちゃったか。