第28章 弄(もてあそ)んだわけではない
***聴視点***
紺兄を見送り、自室に向かう。
作業机に座って、気分転換にちょっとした物を作りながら、そういえばと、リヒトさんに渡した名刺のことを思い出した。
ダークヒーローたちは炙り出しの仕掛けに気づいたんだろうか?
万が一、他人に渡った場合のことも考えて、鬼畜仕様にしちゃったけど。
少しでも火加減を誤れば、紙ごと燃え尽きてしまう椿油を使い。
仮に炙り出しに成功しても浮かび上がるのは、暗号化された、分かる人にしか分からない一昔前の地名だ。
私が託した情報、それは、ネザーに空間があり、かつ、そこに人の気配が集まっている場所。
まぁ、極短時間の調査だったからか、ショウ クサカベの気配を見つけられなかったので、手掛かりの1つでしかないが。
…いやー、だって、深追いしすぎて見つかるわけにもいくまい?
そんなことを思っていれば鍛錬場にジョーカーの気配が現れたので、作業を一旦中断。
ジョーカーの元に向かった。
『今日は何のご用です~?ダークヒーローさん』
「近々、第8がネザーに行くらしい」
『へぇ~、敵の拠点、分かったんだ~』
「誰かさんが、ショウ クサカベの居所を教えてくれれば、もっと楽だったんだがなァ」
『それはまた、随分とイジワルな人がいたもんだねぇ~?』
私がニコニコ笑顔で答えると、ジョーカーは煙草を深く吸う。
ゆっくりと吐き出された煙は、私をグルっと取り巻いた。