第27章 翳り(かげり)
告げられた言葉に、ゾッとするほど自分の命の重さが増すのを感じた。
身体を覆っていた炎が消える。
聴の顔に浮かんでいた笑みは、いつの間にか、うすら寒いものに変わっており、譲るつもりはないという強い意志と、わずかな違和感を伝えてきた。
「…聴、おめェ、何があった?」
『色々あったよ~、本当に。正直、浅草に戻ってもいいのか、って悩んだりもしたしね~。でも、私の大事なものは全部、紺兄に渡してあったから。それに、紅との約束もあったし。ここに帰って来られたのは2人のおかげ。…といった背景もあるので、2人のことは前よりも譲れなくなりました~。そこんとこ把握しといて~』
途中で気まずくなったのか、無理やり軽い口調で締めくくった聴。
俺は打ち明けられた事実に愕然としながらも、ひとまず気持ちに蓋をして、聴を無理やり腕の中におさめた。
しばらく硬直していた聴だったが、やがて俺の背中に両腕を回し、肩に顔を埋めてきたので、俺もしっかりと抱きしめ返す。
馬鹿野郎が…。とんでもねェもん、背負い込んだままにしやがって…。
この後
『このままじゃ寝落ちする~』
と、呑気に笑いながら離れた聴によって、その場はお開きとなり、話は有耶無耶になった。
いつか話してくれる日が来るといいんだがな…。