第25章 幕間 その3
***紺炉視点***
『手持ち花火かぁ~。楽しそうでいいねぇ~』
庭ではしゃいでる連中を見ながら、聴がこっちに歩いてきた。
「聴、西瓜食わねェか?」
『食べる~』
紅の横に座った聴に西瓜を手渡す。
袖をまくり、かぶりつく聴を眺めてると、あの研究者とのやり取りが頭をよぎった。
「…おめェ、本気であいつとよろしくやるつもりか?」
紅も同じことを考えてたみてぇだな。
『あいつって…、あぁ、リヒトさん~?』
一旦食べるのをやめてこっちを見る聴。
何かを思い返すように視線を中空にやった後
『“よろしくお願いします”って言った覚え、ないよ~?』
と首を傾げてきやがった。
一瞬呆けたが、聴の言ったことを思い返して、そういやそうだな、と妙に納得する。
「…紙切れ渡してただろうが」
揚げ足取るんじゃねェ、と紅の顔が不機嫌に染まった。
『“助け合えるといいですね”って言ったでしょ~?』
塩を手に取り、西瓜に振りかけながら聴はのほほんと言う。
『私に関わってもいいことないよ~、って教えることも助け合いだと思うんだよねぇ~』
シャクリという音が妙に響いた。
んふー、と美味そうに西瓜を咀嚼する聴。
口が半開きになってる紅。
俺はと言えば、聴から視線をそらした。
…あぁ、それであの野郎は
「ははっ、見かけによらねぇ…」
って呟いてやがったのか。
「紛らわしい真似すんじゃねェ…」
紅も後頭部をかきながらぼやいている。
『あは~、ごめんごめん~』
西瓜を食い終わり、手をプラプラさせながら聴は苦笑した。
どうやら自慢の妹分は随分と強かになって帰ってきたらしいな…。