第24章 第8の科学捜査官との邂逅
『今は名刺で勘弁してくださいな』
「おや、これはご丁寧に」
リヒトさんに渡したのは、表向きは名刺。…本命はトランプ。
名刺は当然、私のもの。
トランプは少し前にジョーカーが置いて行ったやつだ。
名刺に隠して渡されたトランプを見た途端、リヒトさんの顔が驚きに包まれる。
恐る恐ると言った様子でこちらを見てきた。
『お互い、助け合えるといいですね?』
「…はは。えぇ、ホントに…」
苦笑しながら視線をそらしたリヒトさんに、伝わったようで何より、と思う。
第8に最近配属された科学捜査官。
シンラくんを狙ったと思われる、白装束の団長を足止めしたジョーカー。
偶然同じ現場に居合わせた、と考えるほど、私は“偶然”を信じていない。
しかもヴィクトル・リヒト…浅草の外で医者修行をしていた時に聞いた名前だ。
ジョーカーの好きそうな、真実をどこまでも貪欲に追い求める性質の人間。
案の定、アタリだった。
『紺兄、私は書類仕事してるから。何かあったら呼びに来てね』
「おう」
私が場を離れると分かったからか、紺兄はあからさまにホッとした。
紅もシンラくんとアーサーくんに意識を向けなおしている。
残されるリヒトさん?はは、強く生きてくださいな。