第3章 成果
***聴視点***
そうして約束の時間。
紺兄の部屋に足を踏み入れると、すでに2人ともそろっていた。
私が来る前に何か話したのか、紅の機嫌もそこまで悪くはなさそうだ。
『お待たせしちゃってごめんね~』
「いや、そこまで待ってねェよ」
「…へっ」
らしいといえばらしい反応に、懐かしくなって心の中で笑う。
もともと頬が緩んでいて良かったと、この時ばかりは思った。
2人の前に正座して、ゆっくりと視線を合わせる。
『前もって言っておくね~。本格的な治療は1日に約1時間しかしない。治すのにかかる日数は症状の進行具合による。そんで、治療が終わったら、リハビリにだいたい1週間必要。ここまでは大丈夫~?』
「あァ?約だの、だいたいだの、はっきりしねェな」
『そこは個人差ってやつだねぇ~』
釈然としない雰囲気をかもしながらも紅が黙ったのを確認して、紺兄に顔を向ける。
「その、りはびり?ってのは何なんだ?」
『あぁ、ごめん、馴染みないよねぇ~…。簡単に言うと、灰病を再発しないための練習~』
「!?…いや、まァ、細かいことは後で良いか。それが1週間もかかるのか?」
『ん~、平均そんくらいだねぇ。これは紺兄しだい』
ふむ、と少し間を開けて、紺兄が話の続きを促してきた。
『治療の間は紅に力を貸してもらわないといけないんだけど、良い~?』
「…そうすりゃ治るんだな?」
『うん、約束する』
「なら、いくらでも貸してやらァ」
『ありがと~』
紅の瞳に、絶対に治す、という意志を感じて、変わってないなぁと心が温かくなった。
『紺兄、治療の期間中は発火能力を絶対に使わないでね~?約束できる?』
「絶対に、か…?」
『そう、絶対に~。私と紅に余計な手間をかけさせたくない、と思ってくれるなら、絶対に~』
「…若」
「……わァってらァ」
お互いに微妙な空気で何事か約束し合っていて、クスクスと笑う。
紺兄が発火能力を使うとしたら、紅のために無茶をするか、暴走した紅を止めるためか、だろうからねぇ…。