第23章 詰所の医者との手合わせ
***聴視点***
シンラくんをデコピンで沈めて、やれやれと息を吐く。
「…は?」
あぁ、地面に寝っ転がったら見えるか。
目の前の光景に驚いてるのか、シンラくんが一向に立ち上がろうとしないので、視界を遮るようにして顔を覗き、手を差し出した。
『大丈夫?』
「え、あ、は、はい!ありがとうございます!」
シンラくんを助け起こしたのはいいが、やはり気になるのか上を向いている。
それに釣られたのかアーサーくんも上を見たので視界に入れると
「なんだ、ありゃ…」
と絶句していた。
『あっちがアーサーくんからもらった炎で、そっちがシンラくんからもらった炎ね』
「「…え?」」
『使う当てもないし、もともと2人の炎だし、治療に使っちゃおうか』
返事を待たずに、2人の上に炎を落とす。
「は、はぁ!?」
「あっっつ!!」
『え、熱い?』
「あ、熱いに決まって…、って、あれ…?」
「おい、どうなってる、全然熱くないぞ」
シンラくんもアーサーくんも自分の身体を燃やす炎を眺めながら、不思議そうな顔だ。
「え、痛みが引いた…?」
「痣も…消えたぞ」
んー、ちょっとアーサーくんの分が足りないか…。
2人の間にあった空間を炎でつないで誤魔化しつつ、分配しなおす。
炎はするすると消えてなくなり、辺りには元の静けさが戻った。
『はい、完了。2人ともお疲れ様』
労ったものの、当の2人は首を傾げて?を大量に浮かべている。
「…体験しても頭が追いつかねェか?聴は炎を自分の扱える炎に変換して使う。そいつの炎が治療特化なのは前に話したな?だから他人への直接攻撃は一切できねぇ」
「えっ!?じゃあ、さっき俺たちが炎を出せなかったのは…、俺たちが炎を出したそばから変換して、俺たちにバレないように頭上に貯めていたから、ですか…?」
『正ー解』
2人を見かねて、紅が説明してくれた。