第23章 詰所の医者との手合わせ
***森羅視点***
何が起こってるんだ…?
聴さんに手を貸してもらい立ち上がったアーサーも訳が分からない、という顔をしてる。
『さて、シンラくん。体験してみたほうが早いと思うよ』
聴さんはいつも通りの笑顔なのに、さっきのやり取りを見たせいで、底の知れない何かを感じて、いつもの笑いが出た。
言われるまま足を進めて、聴さんの向かいに立つ。
『遠慮せずに攻撃してきて良いからね。私も組手の心得はあるから』
そう言って構えを取る聴さん。
やるしかない、と覚悟を決めて、地面を蹴った。
いつも通り蹴ろうとして、異変に気づく。
炎が…出ない…!?
『火力はさすがだねぇ…』
聴さんがなんか言ったけど、こっちはそれどころじゃない!
どうにか出せないかと試行錯誤してみるが、やっぱりダメだ…!
そうしている間も聴さんは容赦なく攻めてくるし…!
誰だよ、浅草の人らしくないって言ったの!俺だよ!!
くそっ、何がなんだか分かんねェけど、炎が出せないなら仕方ない!
俺は炎を出すことをあきらめて、組手に集中した。
『お、状況判断が速い。…もう少しアドラバーストを検証したかったけど、仕方ないか』
…え?
言われたことに思わず思考が引っ張られた瞬間
『もー、気を抜くなって言われたでしょ?』
顔面まで数センチのところに拳が迫っていた。
ヤバい!避けきれない!
『はい、終ー了』
額に一点集中でスコーン!と打撃が来て、俺は見事にひっくり返る。
地面と激突して、視界がぶれた。
ようやく焦点が合ってきたころに見えたのは
「…は?」
紫色の炎のかたまりだった。