• テキストサイズ

旗幟鮮明【炎炎ノ消防隊】

第20章 月夜の密会


「アンタはつくづく飽きないな、ミヤ」

目の前のジョーカーは妖艶に笑っている。

「匣の中身に興味はないくせに。その手はいくつもの鍵を玩ぶ」

言われた言葉に思わず息を呑んだ。

「事態が動いたとき、アンタがどう動くのか楽しみだ。…少なくとも俺は、こっちに堕ちてくればいいのに、って思ってるぜ?」

唖然と見上げていれば、ジョーカーの影に完全に覆われ、目の前に黒いコートが迫る。

あ、煙草の匂い、と思ったときには、つむじ辺りに柔らかい感触がしていた。

再び見上げた口元は、ごちそうさん、と紡ぐと闇へと消える。

その場には呆然とした私だけが残された。

…相変わらずミステリアスな消え方するなぁ。

……じゃなくて。

え、もしかして、キスされた?

髪へのキスは、なんだっけ、思慕、だっけ。

んー、今度から少し気を引き締めたほうがいいかな。

……うん、それはそれとして。

匣ってパンドラの匣だよね?

えー、でも、私的なパンドラの匣とジョーカー的なパンドラの匣って別物なんじゃないかなぁ。

……いや、問題はそこじゃなくて。

どうにも脳内が混乱しているが、大事なのは、私の知らない何かがある、ってことだ。

話の流れ的に、気配を探ったときに感じた違和感を突き詰めたらアウト、か。

…面倒な爆弾を落としていってくれたなぁー。

私はため息をつきながら、切り替えよう、と片付けに入る。

すると、ジョーカーの使っていた盃の下にトランプが置かれているのに気付いた。

柄は…鬼札(ジョーカー)だ。

伝言などはない。

私は不思議に思いながらも、そのカードを懐にしまったのだった。
/ 146ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp