第20章 月夜の密会
『それで~?ダークヒーロー様が私などに何のご用でしょうか~?』
「ハッ!俺が来ると分かってた女がそれを聞くかねェ?」
…うん、紺兄が、第8でやった情報交換の話を私にしなければ分からなかったんだけどね。
どんな話をしたのか教えてくれるのは嬉しいんだけど、私は首を突っ込んでも良いのか駄目なのか分からなくて、内心で首を傾げてたよね。
ジョーカーが盃を置き、その上体をぐっと近づけてきた。
その紫の瞳には愉悦が浮かんでいる。
『…うん、その気配はネザーにあったと思う』
ジョーカーが私で遊んでいることは分かっていたので、淡々と事実だけを告げた。
その左目を隠している布からは、戦闘の際に斬られたのか、相手の気配がわずかに残っている。
「もうちょっと面白い反応しろよー」
興が冷めた、とばかりにジョーカーは離れていった。
けっ!
この浅草、しかも武術の師範の娘として生まれ、火消しの兄ちゃんたちの中で育ってきた私に、乙女な反応を期待するなってんだ。
『でも、んー…』
「どうした?」
『なんて言うのかなぁ~…。気配が混ざってる、とでも言えばいいのか』
なんか違和感あるんだよねぇ、と言いかけたところで、ジョーカーに顎をすくいあげられた。