第20章 月夜の密会
***聴視点***
月の光が鍛錬場を照らしている。
今日は満月だ。
現在地は実家。もちろん詰所の皆には今日はこっちで過ごすと伝えてある。
怪訝な顔をされたが、夜にしかできない製薬があってそれを試したいのだと伝えれば、納得してくれた。
まぁ、それも嘘ではないのだけど。
脳内で言い訳をしながら、ちびちびとお酒を舐める。
薬はさっき作り終えた。
その材料としてお酒を使ったからせっかくだし、と今に至る。
「おやおや。月見酒とは風情だねェ」
影からぬるりと現れたジョーカーがニヤリと笑ってこっちに来た。
『いらっしゃい、ジョーカー。一緒にどう~?』
「いいねェ、もらおうか」
お盆を挟んで、少し離れた位置に腰を下ろしたジョーカーに盃を渡す。
とくとくと注げば、歪んだ月が生まれた。
横目で見ていれば、ジョーカーは一気に飲み干し、はぁーっと息を吐き出す。
『いい飲みっぷりだねぇ~』
呑気に笑いながらお酒を持ち上げれば、盃が差し出されたので注いでやる。
「いい酒だな」
『ふふ~、中途半端なものは使えないからねぇ~』
どうやらいける口だったようだ、良かったよかった。
つまみに持ってきた浅漬けをシャクシャクと咀嚼する。
「ショウ クサカベと一戦交えた」
そんな中、なんてことないように告げられたのは、とんでもない内容で。
『強かった~?と聞くべきなのか、よく無事だったねぇ~?と聞くべきなのか…』
「くくっ!足止め程度の短い時間だがな。…ありゃバケモンだ」
そう言いながらもジョーカーは悪い笑みを浮かべている。
うはぁ…。怖いもの知らずだねぇ…。